多くの人には「人前に出るときには緊張して当然」というような考えがあるため、社会不安障害の人に対しても「気合を入れて」「これを乗り越えなければ大人ではない」などとハッパをかける傾向があります(何と言っても、患者さん本人が一番そう思っているものです)。
そういう目で社会不安障害の人を見てしまうと、「どうしてもっと勇気を出せないんだろう」とイライラすることもあります。
周りの人からそう見られることで、本人はますます「だめな自分」を意識します。
つまり、本人も含めて皆が社会不安障害の人を「弱虫」「臆病者」「はっきりしない」などと見ていることになり、人格評価が下されていると言ってもよい状態になっています。
でも、社会不安障害は病気であるという認識をすると、視野が大きく変わります。
「病気」というのは、「基本的に本人にとってつらい状態であり、好き好んでなっているわけではない」「症状を自分でコントロールできない」という意味で用いられます。
病気になりたくてなっている人もいなければ、病気の症状のうちどれかを選べる人もいないのです。
「インフルエンザにはかかるけれども、関節痛だけで勘弁してもらい、熱はやめてほしい」などと症状を注文することはできません。
病気になったら、一連の症状がセットで現れるものです。
また、病気は本人の意思ですぐに治せるものではありません。
風邪のように静養しながら時の経過を待つ必要のある病気もありますし、しかるべき治療をしなければ治らない病気もあります。
社会不安障害も「しかるべき治療をしなければ治らない病気」のひとつであると言えます。
放っておくことで悪循環に陥る特徴があるからです。
社会不安障害を病気として認識することによって、それまで「自分が人間として弱いせいだ」と思い込んで来たことが単なる病気の症状であったことを理解することができますし、まわりの人たちも「どうしてあんなに弱いんだろう」とイライラしていた認識を改めることができます。
こうして不要な罪悪感や苛立ちをなくすだけでも治療的ですし、何と言っても、病気として認識することによって、治るということがわかり、どういう治療をうければよいのかが明らかになります。
「どうしようもない」のではなく、「何かができる」ということになるのです。
※参考文献:対人関係療法でなおす社交不安障害 水島広子著