不安を恐れる人々は、コントロールできないくらいに増幅してしまうことを考えて、小さな不安をも恐れるようになります。
しかし不安が有用な場合もあります。
真の身の危険にさらされた場合には「逃げるか戦うか」反応が、我々の生命を救う日もあるでしょう。
不安と成績(作業効率)との間には、思いもよらない関係が存在します。
このことが初めて実験によって調べられた時、予想もしていなかったような結果が得られたのです。
第一に、平均的作業効率は、2つの異なったレベルの不安状態において達成されうる、ということが読み取れるでしょう。
ほどよく平静を保っている人は平均的作業効率を達成することができるし、非常に緊張した人もまた、同様の作業効率を達成することができるでしょう。
しかしながら、ほどよく平静を保っている人は、より切迫した状況下で不安が増した場合にも作業効率を低下させないだけの大きなゆとりを有しています。
一方、不安がさらに増強した場合、すでに非常に緊張している人の作業効率は低下してしまいがちです。
しかし、そのような作業効率低下が起こるのは、不安が非常に強くなった場合だけであるという点には注意が必要です。
ということは、理想的には、日常業務を遂行する際には平静を保つことを目標とするのがよいでしょう。
そうすることにより、ストレスの多い状況には、より大きなゆとりをもって対処することができます。
日々、リラクゼーション技法を練習することにより、この目標を達成することができるでしょう。
しかしながら、ある程度不安や緊張が高くならなくては最善を尽くすことはできないということも考慮に入れる必要があります。
最高の作業効率は平均的作業効率が達成されるよりもより高い不安状態において達成される、ということです。
不安の増加によってもたらされる注意力、集中力の増加は、実際、最高レベルの作業効率達成のために必要不可欠な要素です。
おそらくあなたもそのような状況を幾度か経験したことがあるでしょう。
例えば、通常感じている以上の不安を感じたからこそ、面接や試験でよい成績をあげることができたのでしょう。
この治療プログラムは、人生から不安を消し去ることを目標とするものではありません。
むしろ、不安が強くなり過ぎないようにコントロールし、適度なレベルの不安が存在しても心配しないで過ごせるようになることを目指しているのです。
※参考文献:不安障害の認知行動療法(2)社会恐怖 患者さん向けマニュアル