みんなとても悩んでいる
人前に出るのが怖い
この章では社会不安障害とはどんな疾患なのか、疾患としてみとめられるまでの経緯も含めて、見ていくことにします。
社会不安障害(Social Anxiety Disorder)という疾患名のなかの「社会(social)」という言葉は、人が集まる、人と人が交わる、という意味です。
社会不安障害とは、一言でいうと、「人前に出たり、何かパフォーマンスをしたりするのが恐い」という症状を中心とした疾患です。
社会不安障害の人達は、たとえば次のような場面で、著しい不安や恐怖、緊張を感じることがあります。
・会議などで意見をいったり報告したりする
・人前で電話を掛ける
・グループ活動に参加する
・他人の見ている場所で食べたり飲んだりする
・権威ある人やよく知らない人と話をする
・人前で仕事をしたリ字を書いたりする
・観衆の前で話す
・他の人がいる部屋に入る
・人と目を合わせる
・来客を迎える
・自分を紹介される
こういった場面で強い不安を感じたり、非常に緊張したりする。
そのために、たいへん苦痛を感じたり、日常生活に支障が出たりして、医学的な治療が必要とされる状態のことを、社会不安障害と呼んでいます。
薬の治験に応募が殺到
製薬会社(ソルベイ製薬と明治製菓)が、フルボキサミン(商品名はルボックス、デプロメール)という薬について、社会不安障害の治療薬として国の認可を受けるための治験に参加する人を募集した広告がありました。
カーテンの脇から不安そうにこちらをのぞいている男性の姿が、社会不安障害で悩む人の特徴をよく表しています。
最近は、各種の薬の治験に協力してもらえる人を集めるのがたいへん難しくなっているのですが、この広告に対しては、短い期間のうちに大勢の人達から応募があり、あっという間に十分な人数の協力者が集まりました。
それだけ、「人前に出るのが恐い」という悩みを密かに抱えながら、なんとかしたいと思っている人が多く、みなさんとても困っているんだということを、あらためて強く認識させられた出来事でした。
参考文献:不安症を治す 大野裕著