社会不安障害の患者さんには、総じてまじめで完璧主義の人が多く見られます。

そして、「絶対にいいか、さもなければ全然ダメか」「完璧でなければ意味がない」「一つ失敗したからもう全部ダメだ」など、「全か無か思考」と呼ばれる極端な思考に陥りやすいのです。

あるいは、自分に関係のないことでも、負の見方や考え方はすべて自分にあてはめてしまう「個人化」という現象もよく見られます。

そこで、さまざまな療法を通じて、「自分のダメな部分にも目をやる」「ダメな部分も認める」ということも大切になります。

「ダメなことろもあるが、いいところもある」「物事は100%でなくてもいい。50%でも、また次にがんばればいい」「あの人はこうだが、自分はこうでいい」など、柔軟な見方や姿勢ができるようになるのが目標です。

こうした完璧主義者や「全か無か思考」により、社会不安障害の患者さんは、心理療法を行う治療者に対しても、最初は緊張感を持って接するものです。

治療に必要な質問なども、苦手な人が多く、「うまく答えられなかったから、もうやめる、あきらめる」という思考に走ることが少なくありません。

みんなに好かれなくてはならないという誤った感覚や信念を持っていることが多く、治療者にきらわれたという思い込みも加わりがちです。

そこで、治療を始めるときには、最初に「一回ではあきらめないで」と伝えたいです。

心理療法、とりわけ認知行動療法や自律訓練法は、効果があるといっても、手っ取り早く魔法のように効くわけではなく、受ける自分自身の意欲と努力が必要です。

しかし、それらによる自己コントロールが獲得できれば、社会不安障害の症状改善に役立つだけでなく、今後の人生のいろいろな場面で役立つ財産ともなります。

※参考文献:人の目が怖い「社会不安障害」を治す本 三木治 細谷紀江共著