ヒポクラテスと社会不安障害
古代ギリシャの医の聖人として知られるヒポクラテスは、今日の引きこもりにも通じるような強度の社交不安に悩む男の例を記載しています。
これは17世紀初めに出されたロバート・バートンの有名な『メランコリーの解剖学』という本の中に紹介されています。(バートン自身も社交状況で出現した不安発作の男性を記載しています。)
ヒポクラテスは次のように書いています。
「はにかみやで疑り深く、臆病なために外に出ようとしなかった男がいました。
この男は人前に出るとからかわれたり、恥をかかされたり、身振りや話が緊張のあまり不自然になるため、具合が悪くなるのではないかと恐れて仲間に加わろうとしませんでした。
彼はみんなが自分のことを観察しているようにおもってしまうのでした。」
これはまさに全般性の社会不安障害に悩む方の病理の中核を示しています。
現在であれば重症の全般性の社会不安障害で、回避性人格障害の診断も同時に満たすものとされる例です。
わが国で大きな社会問題となっている引きこもりの方を連想させます。
この例からは、社会不安障害は今日突然登場した心の病ではないことがうかがえます。
※参考文献:社会不安障害 田島治著