現在の精神医学の考え方
不安が症状になるその他の障害
現在の精神医学では、各種の精神的な障害を、原因にもとづいてではなく、患者さんに実際に表れている症状によって分類していくという考え方が中心になっています。
それらの症状を、disorder’つまり「一時的な変調」としてとらえ、そうした症状によって患者さんがいまどんな問題に直面しているのかを具体的に明らかにし、それをかいけつしていくような治療法が望ましいと考えられています。
この中で、社会不安障害は「不安障害」、つまり不安症状を中心とする精神障害のなかに含まれています。
不安障害の分類を示したのが下記です。そのなかで、これまで説明してきたように、人前に出たり、人前で何かをしたりするような場面で強い不安をかんじるのが、社会不安障害です。
DSM-Ⅳ-TRによる不安障害の分類
・広場恐怖を伴わないパニック障害
・広場恐怖を伴うパニック障害
・パニック障害の既往歴のない広場恐怖
・特定の恐怖症
・社会不安障害(社会恐怖)
・強迫性障害
・外傷後ストレス障害(PTSD)
・急性ストレス障害
・全般性不安障害
・一般身体疾患による不安障害
・物質誘発性不安障害
・特定不能の不安障害
「内気」「人嫌い」とどこが違うか
社会不安障害は人見知りの性格とは違うのでしょうか。そもそも、内気、あがり性、人嫌い、などといった性格上の傾向と、社会不安障害の不安症状とは、どちらも人間の脳の中の偏桃体などの働きと関係していて、まったく別々のものとは言えません。
「内気」、つまり内向的でなかなか一歩踏み出せないという傾向は、どちらかというと性格的な要素が強いようです。
一般によく「あがり性」といわれるもの、人前で何かをやってみても、どうもうまくいかず、だんだんそういった場面に対して臆病になってしまうという傾向は、社会不安障害の症状と近く、何らかの関連がありそうです。
「人嫌い」とか嫌人傾向と呼ばれるものは、社会不安障害とはまた少し違った問題があるように思われます。
「自分のこんな性格を変えたい」と思い悩む人は少なくありませんが、どんな性格にも、いい面と悪い面があります。
性格は遺伝によって影響されている部分もありますし、性格をかえようとするよりも、自分の性格のいい面を生かすような仕事や暮らし、人間関係の持ち方などを工夫していくことが大切です。
また、何か非常につらく感じることがあったり、仕事や暮らしに具体的な支障が出ているようなときには、性格のせいだからと簡単にあきらめたり、一人で抱え込んだりせずに、精神科医や心療内科医に相談してみるといいでしょう。
参考文献:不安症を治す 大野裕著