社会不安障害の経過

社会不安障害は10代半ばの15~16歳頃、すなわち中学二、三年生から高校一年生頃に発病することが多いことがわかっています。

小学校の頃は明るく活発だった子が、英語や国語、音楽の授業などでさされた際、いつになく緊張し困ってしまった体験などをきっかけに恐怖感が条件付けされ、そうした場面では必ず恐怖反応がでるようになり、それを避けようとする行動も加わって社会不安障害という病気が完成します。

<Rさんの例>
40代後半の会社員Rさんは小学校6年生のときに初めて社会不安障害の症状がでました。

通常よりやや早い発症です。

運動会のときにみんなの前で失敗をしてしまい、それがきっかけになりました。

その後から同じような場面になると過度に意識するようになったのです。

中学生になっても人前での過度の緊張は続き、うまく話をすることができず失敗を繰り返したため心の傷となりました。

声が上ずり、心臓の鼓動が激しくなり、非常に汗をかいて困ります。

社会人になると仕事の関係上人前ではなしをしたり、結婚式での挨拶などの機会も増えましたが上手に話をすることができず悩んでいました。

その為、催眠療法なども受けたものの、まったく催眠がかからず2,3回でやめてしまいました。

たまたま社会不安障害の記事を読んで受診した時には、早く今の状態から脱したいという思いでいっぱいでした。

また、一方で小学校入学前の幼稚園の時期や、さらには物心付いたときからなどというように、かなり早い時期に社会不安障害を発症する方も一部あります。

こうした人は人見知りが強くて幼稚園に行けなかった、行っても他の子どもと関われなかったということも多いようです。

その他に社会人になってからある程度過ぎた30歳以降に社会不安障害を発病する方も一部あります。

こうしたタイプの方では年齢とともに会社での立場や責任が重くなり、人前での話や人との関わりが増える為様々な工夫や努力をしたにもかかわらずますます社会不安障害の症状が悪化して怖いという方もまれではありません。

定年退職すると人との関わりが多少とも減るため症状が楽になりそうなものですが、定年後に症状を苦にして訪れる方もあります。

必ずしもきっかけとなるような出来事や体験をどの人も思い出すわけではありません。

徐々に悪化したという方もあります。

社会不安障害の特徴は不安障害の中でも最も発病の時期が早いことと、多少症状が自然に良くなったりなどの波があるのしても、おのずと完治してしまうケースが少なく、多くの方が一生の間悩みをもちつづける点です。

また、人知れず社会不安障害に悩んでいる方がその後の人生の中で様々な他の心の病気に罹りやすいこともわかっています。

他の恐怖症やアルコール依存症、パニック障害などの不安障害、うつ病などの気分障害を併発することが多いのです。

こうした不安や恐怖をいつも抱えて生活していれば他の不安症やうつ病になりやすいのは当然かもしれません。

※参考文献:社会不安障害 田島治著