社会不安障害の人は「不安をなくそう」と考えない
社会不安障害の人の「危険」「対処能力」「周囲の援助」の3要素
社会不安障害の認知行動療法を通じて大切なのは、一時的に非常に不安な気持ちになっても、実際にどれくらい危険なのか、恐れていたほど危険ではないのではないかと、現実をよく見て、自分自身で確かめたり、認識したりすることです。
社会不安障害の人の不安が強くなる要因には、次の3つがあります。
・危険の過大評価・・・とても大きな危険が迫っている
・自分の対処能力の過小評価・・・自分にはその危険に対処できる力がない
・周囲の援助の過小評価・・・自分が危険な状況に陥って誰も助けてくれない
逆にいえば、社会不安障害の人は危険や自分の対処能力、周囲の援助をありのままに評価できるようになれば不安は和らぐことになります。
どれくらい危険なことが起こりそうなのかは、現実の場面に出向いてみなければわかりません。
社会不安障害の人はエクスポージャによって、比較的不安の小さい場面から始めて、しだいに不安の大きい場面に、一定の時間、身を置き続ける訓練を重ねる。
そうやって、社会不安障害の人は不安な気持ちになっても、実際にそれほど大変なことが起きるわけではないと実感できれば、不安な気持ち自体も和らいでいきます。
社会不安障害の人は自分の対処能力については、恐くなったり、緊張してしまったりしても、どうにかできる方法を工夫してみる。
呼吸法や注意のそらし方などによって、一時的な気持ちの高ぶりを切り抜ける。
社会不安障害の人はそういった経験を何度もしていくうちに、かなり不安になっても、自分にもそれなりの対処能力があるとわかり、不安は軽くなります。
また社会不安障害の人はSSTなどによって、話し方、聞き方などの練習をして、実際の人付き合いの幅を少しずつでも広げていけば、他人はそれほど冷たいわけでもないし、そんなにいつも自分のことを見ているわけでもないとわかってきます。
社会不安障害の人はこちらが困っていれば手助けしてくれることもあるし、何かを失敗をしても、それで急に低く見られたリ仲間外れにされたりはしない。
そのようなことがわかってくれば、不安はもっと減っていきます。
社会不安障害の人は不安な気持ちがあっても大丈夫
社会不安障害の人が不安に対処するには、現実に目を向けて、自分が恐れていたことがそれほど危険ではない、自分も必要な対応ができる、周りの誰かが助けてくれることもあると、実感できるようになることが大事です。
社会不安障害の人は実際の場面のなかでは、急に不安になることがあっても、そうした不安な気持ちが時間とともに変化すると知っておくと、その場にちょっと踏み止まることが、できやすくなります。
社会不安障害の人は、そのときに、不安を完全になくそうとは考えないでください。
不安な気持ちには、私たちの心が、自分自身に対して、何らかの危険が近づいていることを知らせるセンサーやシグナルのような役割があります。
不安を全く感じなくなるのは、人間という生き物として、とても危険なことでもあるのです。
社会不安障害の人は現実をよく見て、自分にある程度は自信を持ち、他人のこともそれなりに信頼しながら、その時々、適度に不安を感じることができる。
不安な気持ちが多少あったとしても、そのまま過ごしていて大丈夫だろうと思えるようになる。
それくらいが、バランスのいい心の在り方ですし、そのような心の在り方を、その人なりに手に入れることが、社会不安障害に対する精神療法、認知行動療法の治療目的でもあるのです。
参考文献:不安症を治す 大野裕著