社会不安障害ですぐ効くものは要注意

自分の力で乗り越えたことにならない社会不安障害

いまの世の中は、何でもすぐに成果や結果がでることを期待されるようになっています。
すぐ面白い。
すぐおいしい。
すぐ使える。
すぐもうかる。

世の中が全般的に、非常にスピードアップしていることの表れでもあるのでしょう。
だからこそ、その速い動きについて行けずに不安を感じる人が増えてきているのだと思います。

しかし、社会不安障害を克服しようとして、すぐに効果が出る方法に頼るというのは必ずしもいい解決法ではありません。

自分の力で社会不安障害を乗り越えたというよりも、社会不安障害から逃げることになってしまうからです。

社会不安障害やうつを体験している人が、いわゆる「自己治療薬」としてアルコールに頼ることがよくあります。

たしかにアルコールを摂取すると、手っ取り早く気分が晴れやかになったり、眠りについたりすることができますが、それはその時だけのことです。

けっして心の力にはつながりません。

アルコールのために気分が沈み込んだり、眠りが浅くなって夜中や早朝に目がさめたりすることもあります。

事故につながったり、それが習慣化してアルコール依存になったりでいいことはありません。

依存という意味では、たばこもよいストレス解消法とはいえません。

薬も、すぐに社会不安障害に効果が出ないと不安になるかもしれませんが、医師と相談しながら心の力を伸ばすためにうまく使っていくようにすることが大事です。

社会不安障害の克服に「時間がかかること」の値打ち

社会不安障害で不安を感じたときに、すぐに「効果」が出る方法は確かにあります。

たとえばその場から逃げてしまえば、そのときはラクになります。

しかしそのときの不安レベルの低下は限定的で、それ以上に不安が和らぐことはありません。

社会不安障害で恐くなったり緊張したりしたときに、抗不安薬やβブロッカーなど頓服薬を飲むのもすぐに効果が出る方法の一つです。

それもときどきならいいのですが、社会不安障害で不安になったときにいつも薬に頼っていると、自力で不安に対処する力が育ちません。

不安の頓服薬は、「いつも持っていて、持っていることで安心感をつくり、実際にはそれほど頻繁に使わない」という「使い方」をしてこそ意味があるのです。

社会不安障害の不安に対処する力を高めていくためには、不安を感じる場面にあえて向き合ったり(エクスポージャ)、人付き合いのスキルを高めたり(SST)しながら少しずつ自信をつけていく取り組みが役に立ちます。

それらはどれも段階を踏んで一つ一つ進めていく必要があります。

やってすぐに効果が出るというものではなく、それ相応の時間がかかります。

社会不安障害の不安を早く消し去りたいという気持ちはよくわかりますし、「時間がかかる」というのは、たしかにやっかいなことです。

しかし、「時間がかかる」のは、それだけの値打ちがあることだからです。

じっくりと取り組んでいけば単に社会不安障害が改善するだけでなく、「心の力」や「人としての力」につながっていきます。

※参考文献:社会不安障害 田島治著