社会不安障害は生活の質(QOL)にも影響
最近よく言われる生活の質QOL(Quality of Life)についての研究はそれほど多くありませんが、そのいくつかからも、心や体の健康度や活力、社会における活動の幅などの面で顕著な悪影響があることがわかっています。
社会不安障害の場合には人間関係や、そうした場面での自己表現と自尊心の獲得などに強い影響がでているのが特徴です。
このカナダの研究では、社会不安障害の人は自分が社会でうまくやれていないという評価をしている人が多く、仕事や家庭生活、友人や余暇の活動、収入面などでの不満が強いことも指摘されています。
こうした悪影響は社会不安障害に伴いやすいうつ病やアルコール依存症などとは関係なく、社会不安障害自体による影響であることがわかっています。
ある40代の会社経営者の男性は、会社のごく内輪の会議で話をするのさえ苦痛で恐怖な状態が20年以上も続いていましたが、同じくSSRIであるフルボキサミンによる治療により半年ほどで著しく改善しました。
以前は大きな会合があると一か月以上も前からくよくよと悩み、関連する会の役職を要請されても人前で話すことが怖く頑なに断っていました。
治療後は今まであれこれ理由をつけて逃げ回っていた役も積極的に引き受けられるようになり生活が一変しました。
このように多くの方が長年悩んでいた症状から解放されると人生自体が大きく変わることが分かります。
この方も本当に受診してよかった、治療によって人生が変わったと感謝しますが、実はご本人が最も喜んだのはそうした社会生活自体の改善ではなく、人から見れば些細なことにくよくよと悩み、恐怖のあまりなんとか逃げようとしていた自分から解放されたことが最も嬉しいと言います。
こうした自己嫌悪、自己評価の著しい低下からの解放はまさにQOLそのものの劇的な変化と言えましょう。
※参考文献:社会不安障害 田島治著