社会不安障害と認知の歪み

社会不安障害の発症には恐怖感の条件付け学習とある意味での心理的な歪み、思い込みが関係しているようです。
認知という言葉は最近でこそうつ病の認知療法などということで目にすることも多くなりましたが、一般の方には馴染みのない言葉です。
普通は子どもを認知するなどと言う場合の使い方しか思い浮かばないかもしれません。

「認知」という言葉を専門家が用いる場合には注意や集中、記憶や言語、物事の計画や判断と実行など、気分や感情以外の心の働きのほとんどを指しています。
簡単に言えば頭の働きです。
しかし、認知療法とか認知の歪みとか言うばあいには多少意味合いが異なっており、自分や自分のおかれている状況、自分の過去や未来をどう捉えるかという物事の認識の仕方という文字通りの意味です。

人前で過度の不安や緊張が生じ恐怖症になってしまう社会不安障害の場合、当然のことながら、こうした意味での認知の歪みがあります。
ですから社会不安障害の認知モデルという場合には、認知の歪みが社会不安障害発症の原因といっているわけではなくて、症状が長期に続いて悪循環を起こす元になっているという考えです。

最初に社会不安障害における認知の歪みのモデルとして提唱されたのが有名なクラークとウェルズのモデルです。
ちょうど社会不安障害に対する関心が高まった1995年に出されたもので、社会不安障害に関する本では必ず紹介されています。
彼らは社会不安障害の人では不安のプログラムと呼ばれる誤った信念によって生じる悪循環が病気の持続に関与していると考えています。

※参考文献:社会不安障害 田島治著