社会不安障害とは、人と接する場面に強い不安を感じ、日常生活に大きな苦痛と支障が生じるという病気です。

子供や若者だけでなく、大人でも辛い思いをしている人が大勢います。

社会不安障害は日本で、対人恐怖症とよばれていたものが、世界的にもその存在が認識され、Social Anxiety Disorderという言葉を日本語に訳し、逆輸入されたものです。

一方で、大勢の人前でスピーチや何かをする時に不安になったり、緊張したりするということは、誰にでもある当たり前の事です。

人間は、サルやオオカミと同様に、群れをつくる社会的な動物です。

サルの社会でも、群れの中で、個体間の緊張が高まる時に、リラックスするための行動をとるのですから、人間社会の中でも、人と人との関係で、緊張し、不安を感じることは当たり前です。

そうしてけんかしたり、仲良くなったりを繰り返していくのが、社会でしょうから、人前でうまく話ができない、ふるまうことができないことに劣等感を抱く必要はないのです。

さて、人前で不安になることが普通だということを強調すると、「社会不安障害というのは、そもそも病気なんですか?」という質問があります。

この質問に答えるには、健康から病気へといこうしていく連続体(スペクトラム)を考えてもらうといいです。

人前での多少の不安は健康な人でもありますが、その程度が段々にひどくなっていくと社会不安障害予備軍になり、人前で話すことが非常につらく耐え忍ぶようになり、日常生活に支障が出始めると軽症の社会不安障害、人前で話す機会をなにがなんでも避けるために学校や会社を休んだり、家にひきこもるなど、日常生活に大きな支障を来すと重症の社会不安障害ということになります。

社会不安障害の治療として、薬物療法を超える認知行動療法の方法を世界で初めて開発したのが、英国のデビッド・M・クラーク教授です。

2006年に、彼が来日した時の社会不安障害の認知行動療法のワークショップの内容が、『対人恐怖とPTSDへの認知行動療法』(星和書店)に収められています。

彼の研究をモデルにして、大学において実践を続けてきましたが、現在、薬物療法抵抗性の社会不安障害の人にも認知行動療法が高い効果を示すことができることを臨床試験で証明することができるようになってきています(世界初)。

※参考文献:自分で治す「社交不安症」 清水栄司著