外部の状況や出来事が直接に苦痛な感情を引き起こすことはできない、ということは驚くべきことに思われるかもしれません。
いったい何が我々を不安に陥れるのでしょうか?
それは我々のものの考え方です。
次の例を考えてください。
3人がバス停でバスを待っています。
バスが近づいてくるのが見え、彼らはバスを呼び止めようとしましたが(訳注:オーストラリアでは手を振らないとバスは止まらない)、バスは止まらずにそのまま通りすぎてしまいました。
列の最初の人は、飛び跳ねながらこぶしを高く振り上げて叫び、怒っているように見えます。
列の2番目の人は、突然泣き出し、落ち込んでいるようです。
列の3番目の人は、心底から笑い出して喜んでいるようです。
同じことが彼ら全員に起こったのに、3つの異なる反応がありました。
明らかに、反応の原因は出来事ではありません。
ではそれは何だったのでしょうか?
なぜ、それぞれがそのように反応したのかを知るために、我々は彼らが何を考えていたのかをしらなければなりません。
最初の人は、次のように考えていたことがわかりました。
「なんということかしら!大事な会議に遅れてしまうわ」
だから彼女は怒っていたのです。
2番目の人は、その朝少し憂鬱な気分で目覚めました。
バスが通り過ぎた時、彼は「何てことだ。今日は何事もうまく行かない日なのだろう。みじめな気分だよ」と考えました。
3人目の人は、「万歳!次のバスまで30分あるぞ。完璧に正当な理由ができたよ。コーヒーでも1杯飲みに行こう」と考えました。
認知療法の基本的な原理は、我々の感情的な反応を決定するのは我々が状況に対して作り上げた解釈である、ということです。
これらの解釈は、類似した状況でのかつての経験や、我々の全般的な感受性、自分や他の人々との関係についての感じ方や世界観を含む人格的な側面の影響を受けます。
もちろん、いくつかの出来事は現実に不愉快であったり、いくつかの状況は心地悪かったりするかもしれませんが、我々が極度に強く不安、恐怖、抑うつ、無価値観、劣等感、怒りなどを感じるような出来事や状況はめったにあり得ません。
したがって、もし自分が頻回に強い不安や怒り、不幸を感じていると気づいたら、あなたは、自分が遭遇した出来事や状況について自分をいじめるような、非現実的な解釈をしている可能性が高いのです。
人間は、特定の状況について特定の思考パターンを発展させる傾向にあります。
認知療法の目的の一つは、我々が自分自身や我々の周りの世界についてどのように考えているかを検討することにあります。
もし、我々が、あるタイプの状況についていつも役に立たない非現実的な思考パターンを持っていることに気付いたら、次のゴールは、そのような状況についてもっと有用な考え方を探し出すことです。
最終的なゴールは、さまざまな状況を評価するに際して自分の生活が楽で幸せなものになるような考え方の新たな習慣を作り出すことです。
これには多くの積極的な練習が必要です。
※参考文献:不安障害の認知行動療法(2)社会恐怖 患者さん向けマニュアル