段階的暴露プログラムが成功するにはいくつかのカギがあります。

中程度の不安

不安を惹起する状況をリストアップし、各状況が引き起こすであろう不安の程度を評価することによって、恐怖状況をその惹起する不安の大きさの順番に並べて暴露階層表を作ります。

社会不安障害の患者さんは中程度の不安を惹起すると予想される状況に直面することになります。

難題を選んで進むことができない、あるいは圧倒されたと感じるよりも、予想よりは易しい状況を選んだ方が無難です。

何年も避けてきたことや極端に驚異的であると感じられることに、十分な準備なしに突然直面させられると恐怖は悪化することがあります。

この場合、突然で圧倒的な暴露によって生み出された不安は、その状況と恐怖の関係を強めてしまうこともあります。

これは感作として知られており、我々が達成しようとしていることは反対のことです。

反復暴露

ある状況への暴露は1度で十分というわけではありません。
特定の状況で引き起こされる不安を「徐々に低減する」ためには「認知再構成」を一貫して利用しながら、何度もその状況への暴露を繰り返さなくてはなりません。

これが段階的暴露プログラムで期待される成果、すなわち脱感作のプロセスです。

頻繁な暴露

状況への暴露の頻度がたかいほど、引き起こされる不安の程度は速く減少し始めます。

逃げ出さないこと

ある状況によって引き起こされた不安が減り始めるまで、その状況にとどまっていることはとても重要です。

当初、多くの人はこれを不安に感じます。

「不安はひどいことになりはしないか?コントロールできなくなったらどうしよう?」というのは多くの人が口にする恐怖です。

しかし、第一に、取り組む状況はほどほどの不安を引き起こすような状況だけに限定しています。

第二に、不安は一定の水準以上は増大しないということを研究が示しています。

おそらくあなたはこれまでにすでに一生のうちで最悪のパニック発作あるいは不安発作を経験してしまっているはずです。

とりわけ今やあなたは既に不安をコントロールする方法をいくつか練習してきていますから。

こうした研究では、たとえ呼吸コントロールや「認知再構成法」を全く利用せずに、ただその状況に居続けたとしても、不安は30~90分で自然に減少することが示されています。

これは生理学的に納得できることです。

なぜなら「逃げるか戦うか」反応は、緊急事態の反応として用いられるものなのですから。

30分以内にあなたの命を奪うようなことはないような場合、脳は自動的にそれは真の緊急事態ではないと再分類し、その反応は停止するのです。

何時間も続くような不安を経験すると述べる人が少なからずいることも事実です。

しかしながら、たいていの場合、「逃げるか戦うか」反応は、その状況に対して繰り返し生じる不安な考えの強さにしたがって増大したり衰退したりするのです。

不安が長時間にわたって「ピーク」水準のままであることは稀です。

再三言いますが、不安を引き起こすような状況にいる間に「認知再構成」を実際に用いることの必要性をこのことは示しています。

ある状況に対する考えが現実的かつ有用なものである限り、極端な不安に苦しむことは絶対にありません。

「逃げ出さないこと」はまた、不安をコントロールしたり回避するためにアルコールや鎮静剤を用いないという事でもあります。

こうした不健康な援助なくあなたがコントロールできるような不安のレベルを選択してください。

※参考文献:不安障害の認知行動療法(2)社会恐怖 患者さん向けマニュアル