構造化問題解決法は、問題の解決方法を見極め評価するための枠組みや、選ばれた解決法―問題解決戦略とも呼びます―のための枠組みを提供します。

このプロセスの段階を要約すると以下のとおりです。

構造化問題解決法

第一段階:問題点を明らかにする

第二段階:さまざまな解決方法を列挙する(ブレインストーミング)

第三段階:出てきた解決方法のそれぞれについてメリットとデメリットを評価する

第四段階:最良の解決方法を選択する

第五段階:解決方法の実行の仕方を計画する

第六段階:結果を検討する


第一段階では、問題点を明らかにし、過度に感情的になったり、何が実際に起こっているかについて「認知の誤り」を犯したりしないように気をつけながら、できるだけ正確に問題点を評価することが重要です。

第二段階の目的は、どんな解決方法が可能かについてできるだけ創造的に考えることです。

この段階では、ひとつひとつのアイデアを批判しないで、できるだけ多くのアイデアを思い浮かべましょう。

いっしょに問題について話し合うことのできる人がいるなら、彼らが示唆したこともあなたのリストに挙げて構いません。

どうなって欲しいかというあなた自身の希望も入れておきましょう。

それが最も実行可能な選択であるとは限りませんが、少なくとも自分自身の希望を考慮することはあなた自身にしかできません。

第三段階では、それぞれの解決方法のメリットとデメリットを批判的に評価します。
評価の際には現実的になるべきです。例えば

●自分はこの解決方法を実行するために必要なものは持っているだろうか

・時間

・お金

・その時点での自己主張能力、その他の個人的な能力と技能(例えば、何ができるようになりたいかではなくて、今自分は何ができるかを考える)

●この解決方法は、問題全体を解決するであろうか

●解決方法そのものがどんな問題を起こしうるだろうか

●この解決方法に対して他の人はどう反応するだろうか

各解決方法のメリットとデメリットに相対的な重要度をつけると役に立つでしょう。

この段階では近道することが重要なのではなくて、順番に各解決方法について考慮する時間を十分に取ることが重要なのです。

たぶんあなたは、この構造化問題解決法の練習に費やした時間はそれだけの意味があることに気付くでしょう。

こうすることで、構造化されていない、つまりは役に立たない方法で悩まずに済むようになるし、その時点であなたが考えつくことのできたすべての選択肢について考慮したということは、それだけで気が休まるでしょう。

あなたのワークシートは次のようになるかもしれません。

解決方法:

1.Xさんについての問題を上司に話す。

<メリット> <デメリット>
自分がXさんに直面する必要がない(重要度:***)

上司は非常に話しやすい人だ(重要度:**)

Xさんは直接言ってこないことに腹を立てるかもしれない。恨みを抱くかもしれない(重要度:*)

自己主張の技能が上達しない(重要度:**)

自分で問題を処理しないことについて上司の評価が悪くなるかもしれない。昇進の際にマイナスになるかもしれない(重要度:**)

2.助けがいるとき、私にほうから連絡するので、そのときはお互いの都合のいい時間をセットアップしましょうというEメールを送る。

<メリット> <デメリット>
それについてXさんに直接話す必要がない(重要度:***)

Xさんの都合のいいときに私の手助けをすればよいのだから、Xさんにとっては受け入れやすい解決方法だろう(重要度:***)

Xさんは都合のいい時にこの件について考えるだけの時間が持てる(重要度:*)

Xさんが都合よくなるまで助けを待たなければならないことになる(重要度:*)

Xさんは直接言ってこなかったことに腹を立てるかもしれない(重要度:**)

次に他に可能な解決方法を挙げて下さい。

1._______________________

2._______________________

3._______________________

それぞれのメリットとデメリットは何でしょうか?

第4段階では、挙げられたすべての解決方法のメリットとデメリットを検討して、最良の解決方法、もしくは、ときには最良の解決方法の組み合わせを選びます。

第5段階では、選択した解決方法を実行するための行動計画が必要となります。

●何を誰に言うか?

●それをいつ言うか?

●いかにしてその人に会うか?もしくはそれができないときは、いかにしてその人へメッセージを伝えるか?

第6段階も同様に重要です。結果を検討することによって、あなたは、たとえどんなに熱心に試みたとしても完璧な解決方法を見つけることは不可能かもしれない、ということに気付くでしょう。

計画した行動に介入を実行した後に結果を検討するのが最も良い場合があります。

場合によっては、例えば、新しい反応や新しい他人へのかかわり方をじっくり試してみようと決心している状況では、ある程度の時間が経過したところで状況を再検討しようと思うかもしれません。

再検討をするときは、問題を再評価しなおしてさらに行動を起こす必要があるかどうかを見極めましょう。

もしそうであるなら、あなたが学んだことや起こったであろう変化を考えながら上述の過程をもう一度繰り返してください。

効果的にメッセージを送る

他の人と直接議論する解決方法を選んだならば、以下の点に気を付けて、効果的に、相手を非難することなくメッセージを送りましょう。

●注意深くタイミングを選ぶ

●「あなた」を主語にするより「私」を主語にした表現を使用する。
「あなたが・・・のとき、私は・・・と感じました。なぜなら・・・」

●自分の言葉と非言語的なメッセージを一致させる

●他の人の行動がいかにあなたにとってつらいか、具体的に言おう

●適宜「私の言ったことであなたの気に触りましたか?」と尋ねることによって、他の人の感情を確認し、このように自分が感じたことが正しい受け止め方であったかどうかを照合する

この節の例から分かるように、自己主張をすることによってあなた自身も相手も含めて、やり込められたと感じる人がいてはならないことが分かるでしょう。

もしあなたの主張に対して気を悪くする人がいたら、そのときは、あなたはこれは彼らの問題であってあなた自身の失敗ではないとみなすことができます。

いかに反応するかは彼らの選択です。

健全な自己主張に対してあなたを責める人は、通常あなたの要求に無関心であなたを操ろうとしているのであって、このような人こそ、自己主張訓練プログラムから恩恵を得るでしょう。

それはしばしば彼らの劣等感の裏返しなのです。

キーワードは選択です。

なぜなら、あなたは自己主張するという選択をすることも、自分の権利を主張しないという選択をすることも、またときにはもっと攻撃的に行動するという選択をすることもできますから。

これは、自分の反応をコントロールできずに常に受身的に行動したり、また逆に常に攻撃的に行動することとは全く異なっています。

あなたは、あなたの権利を主張しない選択をするときがあるかもしれません。

それが積極的な選択である限り、全く問題ないことであり正常なことです。

例えば、あなたは愛する人の為には自己主張するという選択をするかもしれません。

あなたはまた、他の人や他の人との関係において、長期的にどのような結果になるかを考える必要もあります。

あなたのパートナー、友達、同僚は、あなたの行動が積極的なものに変化したことに慣れるための時間が必要かもしれません。

あなたの新しい自己主張が現在の力関係に合致しないのでコミュニケーションがとれるようになるまでに時間がかかる人もいるでしょう。

選択

●あなたの権利を主張するか保留したままにしておくか

●あなたの中の感情をどれくらい外に出すか

●あなた自身について人々にどれくらい語るか

●状況ごとにどのように反応するか


自己主張的な選択肢を選ぶことは、攻撃的な態度や自己主張的でない態度で行動することよりも、しばしばずっと困難です。

次の例について、異なる反応様式の例をあげて下さい。

例1:あなたの兄があなたに尋ねた質問に、あなたがちょうど今答えかけているのに、あなたの父親が代わりに答えてしまう。

あなたが幼かった頃から、父親はこうしてきた。

あなたは自ら答えたい。

父親へのあなたの応答は?

自己主張不足:

攻撃的主張:

自己主張:

例2:あなたの友達は、あなたがちょうど買い物に行こうとするところを見る。

彼女は「買い物の途中で、ドライクリーニングに出した私の服を受け取ってきてくださらない?」と言う。

あなたはドライクリーニング店の近くのどこにも行く予定はなく、その店の駐車場は不便なので「はい」と答えたくない。

自己主張不足:

攻撃的主張:

自己主張:

例3:あなたが12カ月前に新しい職についたとき、特に一人の同僚が歓迎してくれて、昼食時に彼らと一緒に食べるよう招いてくれたり、自己紹介をしたりして、あなたが新しい環境で落ち着くのを助けてくれた。

その人は、友人たちが給料日までしのげるよう彼らに金を貸すことを、幾度もあなたに頼んできている。

そして、あなたは断れないと感じて金を貸した。

彼らは全く返済していない。

今、彼らは新たな借金を頼みに来ている。

あなたはどうしますか?

自己主張不足:

攻撃的主張:

自己主張:

※参考文献:不安障害の認知行動療法(2)社会恐怖 患者さん向けマニュアル