<社会不安>とは、たくさんの人達を前にした時の気づまり、誰かに見られていると思った時の緊張感、自らの<身体反応>に対するきまり悪さなど、対人関係において私達が感じるさまざまな不安を総称したものである。

しかし、社会不安とは、実際のところ何なのだろう?私達自身の性格か、それとも病気なのだろうか?

<社会不安>は、「病気ではない、軽度なもの」(例:あがり症、内気)と、「病気である、重度なもの」(例:回避性人格障害、社会不安障害)のふたつに大きく分けることができる。 そしてさらにその症状と度合いによって、<社会不安>は、<あがり症>、<内気>、<回避性人格障害>、<社会不安障害>の四つのタイプに分類されるのだ。 だが、<内気>と<社会不安障害>の違いはどこにあるのだろう? <あがり症>と<回避性人格障害>の差はどこで線引きされるのだろうか? これらのおおよその違いを簡単に説明したのが次の表で、その分類となるのは次の三点である。

正常 精神疾患
・特定の状況で感じる・自我異和性(自分ではそうなりたくないと思う) あがり症 社会不安障害
・生活全般で感じる・自我同調性(自分はこういう性格なのだと認めている) 内気 回避性人格障害

表 4つの社会不安

1.その不安をある特定の状況のみで感じるか、生活全般で感じるか。

2.自我異和性の不安(本人の望みに反していて、その不安に我慢ができない)か、自我同調性の不安(本人が自らに対して抱くイメージとほぼ一致していて、その不安を自らの性格のせいだと認めてしまう)か。

3.その不安は本人の人生にそれほど大きな影響を及ぼさないか、運命を左右するほど重大なものか。

まず、<あがり症>は、ある特定の状況(たとえば、人前で発言する、憧れの人に会う、口述試験を受ける)に置かれた時にのみ症状が現われる、比較的軽度な<社会不安>である。

本人の人生に重大な支障をもたらすことはほとんどなく、従って精神疾患とはみなされていない。

いっぽう、<内気>の場合、ある特定の状況というよりも、本人の生活全般に影響を及ぼすものだ。

ただしこれも、「人前であまり目立つことをしたくない」という性格や気質のようなもので、苦しみもそれほど大きくなく、決して精神疾患とは言えない。

<社会不安障害>になると、特定の状況に置かれるとパニックに陥るほどの激しい不安や苦しみを感じるため、医学上の精神疾患に分類される。

さらに<回避性人格障害>の場合、その症状は生活全般に関わってきて、あまりの不安の強さから対人関係を回避する行動が習慣化し、そういう行為をむりやり正当化しようとしてしまう。

そのせいで人生に大きな影響を及ぼすことが多いため、こちらも<社会不安障害>と同様に精神疾患とみなされている。

つまり、同じ<社会不安>という名称でくくられていても、その症状や度合いは実に多岐にわたっているのだ。

ただし、これら四つのタイプの境界の線引きは非常にあいまいだ。

「自分は軽い社会不安だから」と放っておくと、徐々に悪化して<社会不安障害>や<回避性人格障害>を発症してしまうケースもあるので注意が必要である。

※参考文献:他人がこわい あがり症・内気・社会恐怖の心理学
      クリストフ・アンドレ&パトリック・レジュロン著 高野優監訳