私達は「相手に気に入られたい、でも気に入られないかも知れない」と思った時に<社会不安>を感じている(図1-1)


図1-1 自己イメージと社会不安障害、社会不安の関係

だからこそ、会社の面接試験を受ける人は、試験官に「有能な人材だと思われたい」と思うがゆえにあがってしまい、パーティに参加する人は、「みんなに教養がある人間だと思われたい」と思うがゆえに気おくれを感じ、年頃の男性は、「好きな人にやさしくて素敵な男だと思われたい」と考えるがゆえに胸がドキドキしてしまうのである。

言い換えれば、<社会不安障害><社会不安>は、そこに「果たすべき使命」があるからこそ感じるのだ。

しかし、はたして本当にそうなのだろうか、と疑問に感じるケースもある。

たとえば商店で買い物をするのにものおじしてしまう主婦や、テラス席に人がたくさん座っているカフェの前を通るのにぎくしゃくしてしまう男性や、人前で字を書くとペンを持つ手が震えてしまう女性などは、いったいどんな「果たすべき使命」を抱えているというのだろう?

確かに一見したところ、何もないように見えるかもしれない。

だが、実はそこにも、他人に「感じのよい人だと思われたい」、「変な人だと思われたくない」などの、ひそやかではあるけれどれっきとした「果たすべき使命」が隠されているのだ。

結局のところ、すべての<社会不安障害><社会不安>の根底には、「他人に高く評価されたい」、「他人に気に入られたい」という思いが秘められている。

そして<社会不安障害><社会不安>を感じる人達は、その「クリアすべき基準」を非常に高いレベルに設定していることが多い。

要するに彼らにとっては、自分のあるべき姿、つまり自己イメージの理想が高すぎるのだ。

だからこそ、目の前に置かれた高いハードルにプレッシャーを感じ、大事な場面でいつも通りの行動がとれなくなってしまうのである。

※参考文献:他人がこわい あがり症・内気・社会恐怖の心理学
      クリストフ・アンドレ&パトリック・レジュロン著 高野優監訳