このサイトでは、これまで繰り返し、「研究によって<社会不安障害><社会不安>の治療に有効だと証明されたのは認知行動療法だけである」ということを述べてきた。
では、こうしたことを調べるための研究はどのように行われているのだろうか?
ほんとうに、公平で正確で、説得力のある研究が実施されているのだろうか?
通常、こうした研究は、できるだけ多くの被験者たちを使って、彼らを無作為にグループに振り分けた上で、ある程度長期間にわたって比較調査が行われる。
たとえば、あるグループには数ヵ月にわたって心理療法を受けてもらい、もう一方のグループには同じ期間だけまったく何の治療も施さない。
あるいは、いっぽうには認知行動療法を受けてもらい、もういっぽうには精神分析療法を受けてもらう・・・。
こうして調査期間が終了した後、両グループにおける結果を、被験者一人ひとりの初期状態を考慮に入れながら、比較対照させていく。
つまりこの研究によって、どちらのグループの治療法がその疾患に対してより効果が高かったか、その有効性の度合いはどの程度か、ということを証明していくのである。
この時、偶然によるものではないことを示すために、両グループの結果にはある程度大きな差異が見られなくてはならない。
つまり、たとえ有効性に多少の差が見られたとしても、「統計的に有効な値」が得られない限り、その結果は無効とされてしまうのだ。
さらに、この種の調査を行う時は、必ず細部に至るまで厳重な管理を行い、被験者の症状の変化を克明に記録していくことが要求される。
もちろん、対象とされる疾患の基準、そしてそれが回復したとみなされる基準も、初めからきちんと定義しておく。
そして、被験者の先入観が結果に影響を与えないよう、調査の途中経過は彼らには決して知らせてはならないことになっている。
このように、ある治療法の有効性を証明する研究は、かなり厳しい基準のもとで行われているのだ。
もちろん、認知行動療法が<社会不安障害><社会不安>の治療に有効だと証明された研究結果も、こうした基準をすべてクリアした上で得られている。
なお、付け加えておくと、この治療法の有効性は、世界保健機構(WHO)の公式報告書でも承認された。
ただしひと言で<社会不安>といってもさまざまな種類や重度のものがあり、認知行動療法がこれらすべてに有効であるとはまだ証明されていない。
現在、その原因を調べるために多くの研究が進行中である。
※参考文献:他人がこわい あがり症・内気・社会恐怖の心理学
クリストフ・アンドレ&パトリック・レジュロン著 高野優監訳