社会不安障害によって、社会的・職業的にいろいろな支障をきたすことは多いです。

たとえば、経済的に自立できない(他者とうまくかかわれないために定職につけない)、結婚率が低い、友人関係が少ないことなどと関連しています。

また、生活の質は全般に低く、自殺したいと思う人もいますし、不安反応を身体の不調ではないかと考えて医療機関を頻繁に受診したりする人もいます(受診にともなう人とのかかわりがこわくて、身体の不調に脅えながらも受診できないという人もいます)。

社会的ひきこもりになる人もいますし、そうでなくても対人関係はほとんどないという人も
多いです。

人によっては、それほど顕著な障害を持っているように見えない人もいます。

でも、定職についているとしても、就職面接に強い恐怖を持っているために本来の能力よりもずっと低い仕事に甘んじている場合もあります。

もちろん、能力を発揮できない仕事につくこと自体には何の問題もないのですが、それを自らの価値観に基づく選択としてやっているのか、本来望まないことなのに他の選択肢がないために否応なくやっているのか、というところには大きな違いがあります。

あるいは、ふつうの人だったら転職を考えるようなひどい職場にいるのに、転職に必然的にともなう人とのやりとりへの不安があまりにも強いため、転職をせずにとどまっているということもあります。

これは恋愛関係や結婚生活についても同じで、本当は相手に不満を持っているのだけれども、他人と新しい関係を始めるということがあまりにもこわいために、その関係にとどまり続けている人もいます。

こういう人は一見すると社会不安障害には見えないでしょうが、「なぜこんなに有能な人がこの仕事をしているのだろう?」「なぜこんなにひどいパートナーと一緒にいるのだろう?」と考えていくと、そこには社会不安障害がある、というケースもあるのです。

※参考文献:対人関係療法でなおす社交不安障害 水島広子著