社会不安障害を治療しないと、慢性の経過をとり、自然に回復する率は低いです。
自然経過を追った研究によると、二年後の回復率はうつ病の場合80%、社会不安障害では20%だったということが示されています。
また、同じ不安障害であるパニック障害との比較では、八年後にもまだパニック障害と診断された人は33%であったのに対し、八年後にも社会不安障害と診断された人は67%もいたということが示されています。
自然経過のなかでは治りにくい病気であり、放置しておくと「一生もの」になりかねないということです。
心の病のなかには、治療をしなくても時間の経過のなかでよくなる病気もあります。
また、思春期の一時的な混乱などは、むしろ放っておいたほうがよいこともあります。
でも、社会不安障害については、放っておくことにプラスの意味はありません。
なぜかというと、病気の症状と環境が悪循環にはまりこみやすいからです。
社会不安障害のために人とのやりとりを回避してしまうと、ますます自信がなくなり、社会不安障害が悪化し、人とのやりとりをますます回避するようになる・・・という具合に、放っておくとどんどん悪循環に陥っていくのです。
なお、他の病気の人と比べると治療を求めることも少ないほうです。
「治療を受けに行く」ということも、人とのやりとり(つまり、恐怖の対象)ですから、考えてみればあたりまえのことなのですが、このことがさらに「治る機会」を減じることになります。
また、そもそも病気だとは思っておらず、性格的なものだと思っている人も多いわけですから、「治療を受けに行く」という発想がないかもしれません。
社会不安障害は、生活状況によって症状の強弱が変化することもあります。
たとえば、社交的で面倒見のよい人と結婚することによって症状が気にならなくなったけれども、配偶者が亡くなったら再び症状が目立ってくるということもあります。
あるいは、社会人になってから、人前で話す必要が出て来て初めて社会不安障害を発症するという場合もあります。
つまり、「人との関わり方」は症状そのものであると同時に、症状を左右するものでもあるのです。
これが対人関係療法が有効である根拠のひとつとなります。
※参考文献:対人関係療法でなおす社交不安障害 水島広子著