人は何らかの社会的なストレスに対処するためにサポート源を必要としています。
サポート源が安定していないと、社会不安が強化される可能性があります。
たとえば、配偶者との間に不一致をかかえているひとは、自分が職場でどう見られるかということについて敏感になる場合があります。
本来職場で多少バカにされても、一緒に憤慨してくれるような配偶者がいれば、ある程度衝撃は緩和されるものです。
図に私たちにとって距離が近い順に対人関係を示しますが、対人関係療法は中心にある「重要な他者」との関係性に注目していく治療法です。
もちろんそれ以外の人との関係性もストレスにはなるわけですが、「重要な他者」との関係性が満たされていれば、病気にまでは至らないことが多いのです。
社会不安障害という病気と、身近なところに批判的だったり過保護だったりする人がいたということの関連性を見れば、それもやはり「重要な他者」との関係性の問題として考えることができます。
そもそも何らかのリスクを冒そうとするときには、「失敗しても大丈夫」というメッセージを親しい人が送ってくれることが何よりの力になります。
「失敗したら自業自得だからね。知らないからね」と言われてしまうような環境では、リスクを冒すことに全般的に消極的になってしまうのも無理のないことでしょう。
社会不安障害の治療においても、このあたりの不一致は整理しておく必要があります。
こちらのタカオさんのケースはこれに当たるでしょう。
治療で失敗するのではないか、と冷や冷やして構えている母親が脇にいると、新たな治療を試してみるというリスクを冒すことも難しくなるのです。
※参考文献:対人関係療法でなおす社交不安障害 水島広子著