ご家族にお願いしたいことは、ご本人の話をよく聞き感情を肯定するという仕事です。

感情を肯定することは社会不安障害の治療において大切な要素ですが、やはりご本人は病気の性質上、かなりのハンディを背負っています。

ですから、ご家族が一貫して感情の正当性を認めてあげていただきたいのです。

なかには、ご家族の価値観に照らして、「こんな感情を抱くなんて」と思うようなこともあるかもしれません。

でも、感情は、どんな感情であっても、本人が感じている限り「正しい感情」なのです。

ご家族とご本人は、生まれた年代も、育った環境も違いますし、なんと言っても現在は病気をもっているかどうかという点で全く違うのです。

ご本人は、病気の症状そのものにも苦しんでいますし、ご家族に対して申し訳ないという気持ちも持っています。

同じことをめぐって、感じ方が違うことは多々あると思います。

それでも、ご本人が感じている以上は正しい感情である、と確信していただきたいと思います。

正しい感情には違いないのだろうけれども、もう少し詳しく様子を聞きたいということもあるでしょう。

ご本人にとって、自分の気持ちに関心を持って質問してもらえるというのは悪い体験ではありません。

ただ、気を付けておきたいのは、「どうしてそんなふうに思うの?」という聞き方だと、まるで「そんなふうに思うのは不適切だ」と責められているかのように聞こえることがある、ということです。

特に社会不安障害の方はネガティブな評価に敏感ですし、実際にそれまでの人間関係を調べてみると身近に批判的な人がいたことが多いです。

自分の気持ちを話すというのはご本人にとってかなりデリケートなテーマであるということを認識した上で、追加情報を聞きたいと思うときは、「そこのところをもう少しよく理解したいから、詳しく教えてくれる?」というような、患者さんへの温かい関心が感じられるような聞き方をしていただいたほうが安全だと思います。

そうしないと、それきり口をつぐんでしまうことにもなりかねません。

「病気としての認識」の復習になりますが、病気の症状としての感じ方を聞く時にも、「どうしてそんなふうに感じるの?」という姿勢ではなく、「そんなふうに感じる病気になっていたら、つらいでしょうね」という姿勢を忘れないようにしましょう。

※参考文献:対人関係療法でなおす社交不安障害 水島広子著