社会不安障害の診断の基本は「問診」と「診断スケール」

社会不安障害のような精神疾患の診断は、問診が柱です。

どのような症状に苦しんでいるのか、いつごろから症状が表れたのか、生活に不便はないか、どういった生活を送っているのかなど、さまざまな質問をし、患者さんの話に耳を傾けます。

もちろん、質問にスラスラと答えられない人も大勢います。

逆に聞いてもいないことをしゃべり続ける人もいます。

しかし、その「話せない」「話し続ける」という状況も、診断材料になります。

これだけでも「もしかしたら社会不安障害かも」「うつ状態にあるな」といった、おおざっぱな診断はできます。

ですが、診断の精度を上げ、誤診を防ぐために、診断スケールを併用します。

そして正確な診断が下せるようになります。

社会不安障害のメインとなる診断スケール「LSAS-J」

社会不安障害の重症度を評価するスケールとして広く使用されているのがLSAS-J(Liebowitz Social Anxiety Scale日本語版)です。

24項目の質問があり、それぞれ恐怖や不安の度合い、回避の度合いを4段階で採点し、合計点で評価します。

30点が境界線、50~70点が中等度、90点以上は重度の社会不安障害と診断され、60点以上で治療が必要といわれています。

とはいえ、60点だからいますぐ治療が必要ということでもありません。

その他の診断スケールと合わせ、また、本人が社会的にどの程度の損失を被っているかなどを総合して判断します。

ただ、社会不安障害の人は社会にとって必要な人だと考えられます。

実際、あるクリニックの職員にも社会不安障害の傾向のある人がいます。

彼らはとても優秀です。

彼らを見ていて感じることは不安はなくせばよいというものではなく、「少し不安はあるけれど、一応、自分で対処できる」という程度がベストだということです。

LSAS-Jでいうと、40~60点が該当します。

もちろん、総合して診断する為一概には言えません。

社会的損失が出ているなら、ただちに治療すべきです。

ただ「不安がある」というのは、言い換えれば「無謀ではない」ということです。

環境さえ整っていれば、緻密でミスのない仕事をするのが、社会不安障害の人です。

これは、無謀とは対極のところにいる彼らだからこその長所だと思います。

社会不安障害の診断の精度を上げる補助診断ツール

必要に応じて問診に追加

精神疾患の診断は、今も昔も問診が基本とお話ししました。

そこで診断スケールを追加することで、社会不安障害の診断は格段に精度が上がります。

しかし近年、精神疾患は複雑になり、診断がむずかしいケースが増えています。

例えば、問診とスケールだけでうつ病や新型うつ病を完璧に診断できるかとなると、むずかしいと言わざるを得ません。

どうしてもこぼれ落ちてしまうケースがあります。

さらに、双極性障害の場合は、受診するときはうつ状態なので、見分けるのはさらに困難です。

そこで近年、問診にさまざまな診断補助ツールを加えるクリニックが増えています。

おかげで以前よりも正確な診断ができるようになってきました。

「CT(コンピューター断層撮影)検査」「血液検査」「脳波検査」「光トポグラフィ検査」などです。

これらを診断に取り入れることで、診断の精度を上げることにつながります。

主に気分障害の診断に使用する為、気分障害のない社会不安障害の患者さんには行わない検査もあります。

診断補助ツールは、症状に応じて必要であれば問診に追加する、という使い方がされます。

※参考文献:あがり症のあなたは<社交不安障害>という病気。でも治せます! 渡部芳徳著