社会不安障害の治療で恐ろしいのは、誤診による投薬ミス
統合失調症でも双極性障害でも怖いのは、誤診によって間違った投薬治療を受けてしまうことです。
統合失調症の場合、統合失調症と思っていたら社会不安障害だったという人もいますし、社会不安障害と思っていたら実は統合失調症だったという人もいます。
この人は、抗精神薬によって入院を余儀なくされるほど症状が悪化してしまっていたのとは反対に、抗精神薬をきちんと処方されたことによって症状がよくなり、社会復帰を果たしています。
統合失調症と社会不安障害は、合併することはありません。
不安の強い統合失調症の人も、緊張が強い統合失調症の人もいます。
幻聴や妄想のような症状が表れ、「統合失調症様症状のある社会不安障害」などと診断されることもあります。
しかし、基本的に合併することはないのです。
だからこそ、しっかりきれいに鑑別しなければいけないのです。
双極性障害の場合、社会不安障害なのか双極性障害なのかを考える前に、うつ病なのか双極性障害なのかを見極める必要があり、さらにこれら気分障害は、社会不安障害と合併することがあるため診断は複雑です。
社会不安障害と双極性障害が合併したケースは、もっとも治療が難しいといえます。
というのも、社会不安障害の特効薬であるSSRIは、双極性障害には適さない薬だからです。
双極性障害の人にSSRIを誤って投与してしまい、症状が悪化してしまった例はいくつもあります。
ですから、投薬には慎重になる必要があるのです。
ただ、社会不安障害と双極性障害が合併していた場合、多くは双極性障害の治療を優先させるでしょう。
それは、双極性障害の人には自殺の危険性があるからです。
社会不安障害の人には基本的に自殺の心配はありません。
それは、死が怖いから。
不安障害の人は、危険なこと、怖いこと、不安なことはしません。
それより、生きて目立ちたいという思いが強いのです。
社会不安障害の治療で大切なのは「素早く柔軟な対応」
ある医師は診察時、常に、いまの診断は正しいのか、見落としていることはないか、薬の選択は合っているか、患者さんの様子はどうか、ということを自分に問いかけています。
そして、ちょっとした変化があれば素早く対応し、「この治療法は間違えているかも」と疑問を感じたらすぐに治療方針を再検討するよう心掛けているそうです。
この「素早く気付き」「柔軟に対応すること」が重要であり、医師が患者さんに接する正しい姿だと思っています。
たとえ誤診があったとしても、素早く間違いを見つけて自分の非を認め、軌道修正することができれば、被害は最小限で抑えることができるからです。
社会不安障害の診断にはLSAS-Jという優秀な診断スケールをメインに、光トポグラフィや血液検査といった診断補助ツールを使います。
これらが多角的に結果を導いてくれるおかげで、昔よりも誤診自体は減少傾向にあります。
※参考文献:あがり症のあなたは<社交不安障害>という病気。でも治せます! 渡部芳徳著