社会不安障害の診断に注意が必要な気分障害があります。

それが双極性障害です。

社会不安障害の人はときとして双極性障害と誤診されることがあります。

それは、社会不安障害の人達に共通する、ある性格に起因します。

例えば、おとなしい性格で長年人前に出ることが苦痛だった人が、治療を重ねていくうちに症状が改善し、ある日突然「今度、舞台のオーディションを受けるんです」と報告します。

それを聞いてたいていの人は「躁転したのではないか」「つまり、もともと双極性障害だったのでは」と考えるでしょう。

しかし、ここが違うのです。

社会不安障害の人は、元来、目立ちたがり屋です。

引っ込み思案の目立ちたがり屋、恥ずかしがり屋の目立ちたがり屋というのが彼らの本来の姿です。

つまり、躁転したわけでなく、表面を覆っていた黒いベールによって隠れていた素の性格が、治療によって表に出てきただけなのです。

このような「性格の変化」を、双極性障害で躁転したのか、それとも社会不安障害で本来の性格が戻ってきたのか、見極めることが重要です。

社会不安障害と双極性障害の違いは、過去を思い出して怒りがわくか

実は、社会不安障害と双極性障害を見分ける簡単な裏技がひとつあります。

それは、患者さんに「怒り」について質問することです。

例えば「嫌なことを突然思い出してイライラしたり、怒ったりしない?」や「最近、電車の中で嫌なことがあり、かっとなって隣の人とケンカになったことはない?」と聞くのです。

ここで「ある」と答えた患者さんは、おおよそ双極性障害です。

この質問のポイントは「怒り」です。

それも「過去の出来事を思い出して怒りがわく」かどうかです。

双極性障害の人は、怒りの記憶が脳に残っており、それが何かのきっかけで呼び出され、攻撃的になります。

そのため、突然20年前に経験した嫌なことを思い出して怒りだすといったことが起こるのです。

対して社会不安障害の人は、そもそも「怒る」ということがありません。

もちろん100%すべての人にあてはまるかどうかは分かりません。

また、この質問だけで診断するわけでもありません。

診断補助ツールのひとつと捉えていただけるとよいかもしれませんね。

※参考文献:あがり症のあなたは<社交不安障害>という病気。でも治せます! 渡部芳徳著