改めていうまでもなく、人にはいろいろな性格やタイプがあります。

人前でもリラックスでき、発表や会議などをそつなくこなす人もいれば、人前で緊張しやすく、発表や会議でぎくしゃくしてしまう人もいます。

アルコールを摂取しなければ電車に乗れないような人は、もともと後者のタイプであることが多いものです。

元来、「日本人はシャイ(内気)」「プレッシャーに弱い」とよくいわれます。

今の時代は日本でも、昔ほどシャイでなくプレッシャーに強い人が増えています。

それでも多くの人は、やはり「人前でもっとリラックスできればいいのに」と思っているようです。

とはいえ、それでどのくらい困っているかという「程度」には、たいへん大きな個人差があります。

人前での発表や重大な会議などの前に、緊張してドキドキしたり、多少の冷や汗をかいたりするのは、大抵の人にあることです。

しかし、なかには、顔見知りである少人数での集まりや、人前でのちょっとした行動(飲食する、字を書く、電話をかける、自分を紹介されるなど)でもひどく緊張し、強い不安や恐怖を抱く人もいます。

「ある程度の人数がいる部屋に自分が入って行く」という行為も怖さの対象になります。

そこにいる人の視線が、いっせいに自分にそそがれる感じがするからです。

Fさんのケースは部屋ではなく電車ですが、これに含まれます。

こうした不安や恐怖のために、日常の生活や仕事に大きな支障を生じたり、ほかのメンタルな病気まで招いたりする場合に登場するのが「社会不安障害」です。

近年、先述した症状が、実は単なる性格の問題ではなく、効果的な治療法も存在する、れっきとした精神疾患であることがわかってきました。

その正式な病名が「社会不安障害」なのです。

※参考文献:人の目が怖い「社会不安障害」を治す本 三木治 細谷紀江共著