「社会不安障害=SAD」という名前が世界的に広まってきたのは、1994年に発表された米国精神医学会の診断基準(DSM-Ⅳ)にその病名が掲載されてからです。

DSM-Ⅳにおいて、社会不安障害は「不安障害」という大きなくくりのなかの一つに位置付けられています。

不安障害とは、不安を主症状として、さまざまな身体症状を起こしたり、社会生活に支障をきたしたりする疾患の総称で、従来の分類では「神経症」にあたります。

「神経症」は、ひと昔前には俗に「ノイローゼ」とも呼ばれていました。

正確な医学用語ではありませんが、このようにいえば、多くの人はイメージがわきやすいのではないでしょうか。

ただし、「神経症」という言葉は、性格や精神面の問題が主体となって起こるイメージを与えがちですが、現在は「脳の神経伝達物質」とのかかわりが重視されるようになっています。

神経の情報伝達に必要な物質の量や働き方が十分でないことが、不安障害の主要な原因ではないかと考えられるようになってきたのです。

「不安障害」というくくりに属する多くの病気に、神経伝達物質の働きをよくする薬の有効なことが、その裏付けとなっています。

DSM-Ⅳによると、不安障害には、急激な動悸や窒息感などを伴う”パニック発作”が頻発する「パニック障害」、一定時間抜け出せない乗り物や人込みなどを恐れる「広場恐怖」、さまざまな状況や物(高所、動物など)に対する「特定の恐怖症」、合理的な理由なしにある行為(手を洗う、数を数えるなど)をしないではいられない「強迫性障害」、強烈なストレスを受けたあとに幻覚や不眠などが起こる「心的外傷後ストレス障害(PTSD)」といった病気が含まれています。

世界的に用いられている診断基準に、社会不安障害のいわば”仲間”として、こうした病気が記載されているのです。

社会不安障害が、決して「性格的な問題」や「気の持ちようで解決できるもの」ではないことがおわかりいただけるでしょう。

ちなみに、うつ病は、DSM-Ⅳでは「うつ病性障害」として、不安障害とは別のカテゴリーである「気分障害」に属する病気として記載されています。

[主な不安障害の種類と特徴]

病名 特徴
社会不安障害 人前で不安や恐怖を感じそのために社会生活に支障をきたす
パニック障害 身体的な原因はないのに急激な動悸や発汗を頻発する
広場恐怖 一定時間抜け出せない乗り物や人込みなどを恐れる
特定の恐怖症 さまざまな状況(高所、動物など)に恐怖を覚える
強迫性障害 合理的な理由なしにある行為をせずにはいられなくなる
心的外傷後ストレス障害 強烈なストレスを受けた後に幻覚や不眠などが起こる

※参考文献:人の目が怖い「社会不安障害」を治す本 三木治 細谷紀江共著