社会不安障害の中心的な症状について具体的に紹介しましょう。

不安や怖さを感じる状況や感じ方、身体症状の現れ方などは、人によってさまざまですが、よく見られるのは以下のようなものです。

[不安や怖さを感じる状況]

1.人前で話す

結婚式のスピーチをする、会議で発言する、何かの集会で自己紹介する、発表する、人前で電話するなど。

学生ならゼミやさまざまなミーティングでの発表や発言、会社員なら会議での発言やプレゼンテーション、主婦なら地域やPTAの集まり、学校や幼稚園の保護者会での発言などが対象になりやすいものです。

前々から発言や発表の予定がわかっている場合は、そのことを考えるだけで動悸や息苦しさなどの症状がでることもあります。

2.人前での飲食や給仕

人と食事をする、人前ではしやフォークを使う、人が見ているところでお茶をいれる、お茶や料理を出す、料理を取り分けるなど。

3.人前で字を書く

結婚式や葬儀、個展などでの記帳、役所や銀行での書類の記入など。

飲食、給仕、記帳や記入などのときは、あとで述べる身体症状のうち、とくに手の震えを起こしやすいものです。

4.人々の注目を浴びる

すでに一定の人数が座っている会議室や集会所に入って行く、電車やバスに乗るなど。

スピーチや発表はこれにも含まれます。

食事や給仕、記帳なども、「何か失敗して注目を浴びるのではないか」という心配(予期不安)があるために、不安や恐怖の対象になるのです。

5.人との面談や交渉

初対面の人と会う、権威のある人と面談をする、喫茶店やレストランでオーダーをする、何かを断る、苦情を言う、買った物を返品するなど。

ちなみに、治験での社会不安障害の患者さんの中には、「返品するのは抵抗がない」という人も何人かいました。

理由を聞くと「対象が”人”ではなく”物”だから」とのことでした。

しかし、そういう人でも、喫茶店のオーダー間違いを指摘するのはむずかしいなど、人によって抵抗を感じる場面には差があります。

こうした社交場面のほとんどで症状が出る場合を「全般性」、限られた場面だけで見られる場合を非全般性(限局性)の社会不安障害と呼んでいます。

[不安や怖さを感じるときに出る体の症状]

1.声が震える、声が出なくなる
2.手が震える、ほお・足・全身が震える
3.のどの詰まり感、口の中が渇く
4.顔が赤くなる、ほてる、こわばる
5.動悸(胸がドキドキするのを感じる)、脈が速くなる
6.息苦しい
7.汗をかく(緊張による、いわゆる冷や汗)
8.頭の中が真っ白になる、めまいがする
9.吐き気や胃腸の不快感、食事がのどを通らない
10.頻尿(尿が近くなる)、または尿がでなくなる
11.下痢をする

動悸や息苦しさなどがはげしくなると「パニック発作」の形をとる場合もあり、そのことはDSM-Ⅳにも明記されています。

パニック発作とは、パニック障害をはじめ、いくつかの不安障害で見られる発作的症状で、以下のうち四つ以上の症状が突然に現れ、10分以内にピークに達するものをいいます。

原因はあくまでも不安・恐怖感であり、こうした症状を起こす身体的な原因はありません。

症状の続き方は、ときによって異なりますが、やがておさまります。

[パニック発作の症状]

1.動悸、心悸亢進(心臓の鼓動を自覚すること)、または脈拍数の増加
2.発汗
3.身震いまたは震え
4.息切れ感または息苦しさ
5.窒息感
6.胸痛または胸部の不快感
7.吐き気または腹部の不快感
8.めまい感、ふらつく感じ、頭が軽くなる感じ、または気が遠くなる感じ
9.現実感消失(現実でない感じ)または離人症状(自分自身から離れている感じ)
10.コントロールを失う事に対する、または気が狂うことに対する恐怖
11.死ぬことに対する恐怖
12.異常感覚(感覚麻痺またはうずき感)
13.冷や汗または熱感

※参考文献:人の目が怖い「社会不安障害」を治す本 三木治 細谷紀江共著