日本では、昔から「対人恐怖症」と呼ばれる病気が知られてきました。

これは他国で日本特有のものとして認知されてきました。

社会不安障害と対人恐怖症は、かなりの部分が重なっていますが、異なる部分もあります。

社会不安障害の理解を深めるためにも、対人恐怖症との共通点と相違点についてここであげておきましょう。

下の図を見て下さい。

社会不安障害と対人恐怖症

この図のAは、社会不安障害と対人恐怖症のどちらとも診断される群です。

「社会不安障害と診断される対人恐怖症」、または「対人恐怖症と診断される社会不安障害」といってもよいでしょう。

対人恐怖症は、対人場面で緊張することとそれによる症状が主体となる「緊張型」と、対人場面におけるなんらかの思い込みを自分では確信している「確信型」に別れます。

A群、つまり社会不安障害と診断される対人恐怖症は、このうちの緊張型にあたります。

社会不安障害の症状とも重なりますが、この群の特徴をあげてみましょう。

[A群=社会不安障害と診断される対人恐怖症の特徴]

1.対人場面で注目されたり、恥をかいたりすることを恐れる(羞恥恐怖性)

2.その恐れは、特定の状況(たとえば「人前での発表」「パーティー」など)でひどくなる(症状依存性)

3.そのため、人前に出ると強い不安を感じる(不安喚起性)

4.赤面(顔が赤らむ)・動悸・震え・発汗・吃音(どもり)などの身体的変化を伴う(身体表出性)

5.こうした症状は自分の「性格的欠点」によるものと思っていて悩む(性格起因性)

6.対人場面を回避し、社会的に孤立(現実回避性)

7.疾病恐怖性(赤面や動悸などが身体的病気によるものではないかと恐れること)は認められない

これに対して、C群、つまり社会不安障害と診断されない対人恐怖症は「確信型」にあたり、次のような症状の特徴があります。

[C群=社会不安障害と診断されない対人恐怖症の特徴]

1.自分にはなんらかの身体的欠点があると確信している(疾病恐怖性)

本人が確信している「身体的欠点」としては、「自分の体がくさい(自己臭恐怖)」

「自分の視線がきつすぎる(自己視線恐怖)」などが代表的なものです。

2.その「欠点」が周囲の人に不快感を与えていると感じる(加害恐怖性)

自分がくさくて迷惑をかけている、自分の視線が人を傷つけている、など。

このように、自分の加害性を確信している点が、A群との最も大きな違いです。

3.そのことは周囲の人の態度からも明白であると思う(関係念慮性)

周囲の人が、自分のにおいや視線のせいで顔をそむけた、苦痛な表情をした、などと思い込むのも、このタイプの対人恐怖症の特徴です。

これらに当てはまる場合は、社会不安障害の治療ではなく、確信型対人恐怖症の治療を受ける必要があります。

いずれにせよ、困ったり悩んだりしているときは、専門家(精神科、心療内科など)の診察を受けましょう。

B群は、対人恐怖症とは診断されない社会不安障害です。

この群には、次のような症状の特徴があります。

[B群=対人恐怖症と診断されない社会不安障害の特徴]

1.身体的病気の存在を恐れたり、疑ったりすることがある(疾病恐怖性)

動悸や息切れが心臓病のせいではないか、嘔吐が胃腸病のせいではないかなど、体の病気を疑う場合があるのが、A群との大きな違いです。

この特徴がある場合、対人恐怖症とは診断されませんが、社会不安障害には含まれます。

※参考文献:人の目が怖い「社会不安障害」を治す本 三木治 細谷紀江共著