社会不安障害は性格上の問題ではなく、れっきとした病気ですが、ある程度「この病気になりやすい性格傾向」が認められます。
最も目立つのは、「まじめな患者さんが多い」ということです。
多くの人は、たいへん礼儀正しく几帳面です。
ただし、慣れるにつれて、グッと親しげになる人もいます。
手や声の震え、赤面といった社会不安障害の代表的な症状からは、内気でおどおどした人物像を思い浮かべがちですが、一概にそうとはいえません。
たとえば、非常にやり手の実業家や営業職の人、医師・弁護士・記者といったスペシャリストでも、社会不安障害になる危険性はあります。
また、必ずしもシャイ(内気)な雰囲気ではなく、積極的で活発に見えるのに、特定の対人場面で不安や恐怖を感じ、手や声が震えるという人も少なくありません。
また、社会不安障害の患者さんには、焦燥感やイライラが強い人もいます。
ある程度、自分なりに工夫して対人関係を「回避」しているのに、人前に引っ張り出されるなどで回避行動を妨害されると、イライラや攻撃性が出る場合もあるのです。
社会不安障害の患者さんには、表面上のふるまいはどうであれ、どこか根本的な部分で自信のなさが見られることが多いものです。
それが内側に向かうと「不安や恐怖」となり、外側に向かうと「焦燥感や攻撃性」として人にあたってしまうともいえます。
いずれにしても、「内気でないから社会不安障害ではない」などとは決めつけずに、思い当たる症状があれば、社会不安障害を疑ってみることも必要でしょう。
そうやって早期の発見と適切な対処・治療ができれば、その後の人生や生活の質を高められるだけでなく、うつ病などの予防にもつながります。
ちなみに、もともと真面目で几帳面な性格の人に多く見られるのは、うつ病も同じです。
DSM-Ⅳでは、社会不安障害とうつ病は別のカテゴリーにおさめられていますが、これは症状を重視した分類だからであって、原因から見れば、そもそもうつと不安は表裏一体ともいえるものです。
たとえていえば、風邪で急激に熱が出るのが「不安症状」、長引いてぐったり疲れるのが「うつ症状」にあたり、まったく別のものというわけではないのです。
だからこそ、社会不安障害が長引くにつれ、うつ病との合併も増えてくるのです。
では、ここでいう社会不安障害とうつ病に共通する、その「原因」とはなんでしょうか。
それは、神経伝達物質の量や働き方にかかわっています。
神経伝達物質にもいろいろな種類がありますが、特にセロトニンという物質の不足が、うつ病の主要な原因であることは、近年、明らかになってきました。
社会不安障害の場合は、まだうつ病ほど研究が進んでいませんが、セロトニンの働きをよくする薬剤が効果を現わすことから、やはりセロトニンの機能異常が主要な原因ではないかと考えられているのです。
このほか、社会不安障害は、ドーパミンやノルアドレナリンといったほかの神経伝達物質とも関係するのではないかといわれています。
それらについてのくわしい研究は、今後、進められていくでしょう。
※参考文献:人の目が怖い「社会不安障害」を治す本 三木治 細谷紀江共著