一般に、なんらかの病気を持っていて、その症状が特定の状況で起こるとわかっていれば、誰しも可能な限りその状況をさけようとします。

それは、普通は好ましいことなのですが、こと社会不安障害に関しては、一概によいとはいいきれません。

回避している限り、不安や緊張を感じなくてすみますが、その分、不安や緊張の実態(どのくらい続くのか、そのままいるとどうなるのか、など)をつかむ機会を失います。

結果的に、自分の世界を狭めるとともに、次に回避できない状況になったとき、より大きな不安や強い緊張に襲われることになるからです。

「エクスポージャー(曝露療法)」についてですが、療法として行う場合は、きちんと状況設定をし、曝露(苦手な場面に身をさらす)を進めますが、日常生活で「回避しない」で、その場をどうにかやり過ごすのは、広い意味でのエクスポージャーともいえます。

回避を繰り返すことは、その機会を逸していることにほかなりません。

例えば、電車に乗ると不安・緊張感が強まって、パニック発作を起こす人がいるとします。

そうなったとき、すぐに電車を降りてしまうと、それでパニック発作は解消されますが、「そのまま乗っていたら、パニック発作はどのくらい続いていたのか」はわからなくなります。

少しずつでもがんばって乗り続けていれば、「症状はこのくらいまでがピークなんだな」とか、「意外と長くは続かないものだな」といったことがわかってきます。

それによって、不安感が減少してくるのを、自分で体験することには大きな意味があります。

「どんなつらい状況でも耐えよ」というつもりはありませんが、「このくらいならいけるかな」「この前はここまで大丈夫だったけど」など、自分なりに比較・検討などしながら、チャレンジ精神を持って日常生活を過ごすことも大切です。

※参考文献:人の目が怖い「社会不安障害」を治す本 三木治 細谷紀江共著