社会不安障害は対人交流場面における強い緊張や恐怖感を特徴とし、過度に恥ずかしがったり、他人からの評価を強く恐れたりする精神障害です。

社会的状況を回避し続けることで社会的に孤立していく傾向が認められ、人生そのものに障害をきたしていることも多いです。

また、自殺念慮をもつ患者が少なくないことも判明しています。

このように重大な結果をもたらす疾患であるが、以前は社会的にもあまり認知されておらず、性格の問題と捉えられることもありました。

しかし、近年の研究により有病率の高いことが示され、さらに慢性化しやすい疾患であることから、治療の必要性が強く認識されるようになってきました。

社会から孤立し、自立した生活を営むことができないということは、本人のみならず家族にとっても大変な負担であり、患者数が多いことを考えれば社会全体にとっても大きな損失です。

社会不安障害に対する治療としては、薬物療法や認知行動療法などが単独、あるいは並行しておこなわれるのが通常です。

とくに薬物療法の研究は盛んにおこなわれており、モノアミン酸化酵素阻害薬(MAOI)から選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)まで、さまざまな薬剤の有効性が検討されており、欧米ではSSRIが薬物療法の中心となって使用されているのが現状です。

本サイトは、いまだ十分に理解されているとはいえない社会不安障害の全体像を明らかにすべく、さまざまな視点から構成されています。

薬物療法については治療アルゴリズムをはじめとして、各薬剤の至適用量や投与期間などを詳しく解説しています。

また、精神障害の分類と診断の手引き(DSM)と国際疾病分類(ICD)を中心に、診断基準の検討と鑑別診断についても論じています。

さらに、社会不安障害はうつ病やアルコール依存症など他の疾患との合併が問題になることも多いですが、本サイトではコモビディティについての詳細な検討がなされています。

わが国では対人恐怖症の研究が長くおこなわれてきました。

今日、社会不安障害と対人恐怖症がおおよそ同じ概念であることが示されており、今までの対人恐怖症研究を社会不安障害の治療に生かすことが求められています。

本サイトでは両者の異同をふまえたうえで、社会不安障害に対する森田療法の進め方についても論じられています。

社会不安障害は患者本人の人生に深くかかわる重大な疾患です。

それだけに、本サイトが社会不安障害の治療に取り組んでいる様々な人のお役に立てればと思います。

※参考文献:社会不安障害治療のストラテジー 小山司著