欧米において社会不安障害は30年前には「無視されてきた障害」とされていました。

ところが、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)の二重盲検の結果、その高い有効性がつぎつぎと報告され、様相が一転しています。

社会不安障害がSSRIの投与により「簡単、安全に」治療可能となったと一躍注目を浴びています。

しかし、これほど注目されているにもかかわらず、見逃されている社会不安障害の患者も多く、未治療の患者の多さが報告されています。

一方で、日本では対人恐怖症の研究が、欧米で社会不安障害が注目されはじめるずっと以前からおこなわれ、独自の発展を遂げてきました。

その成果は欧米でも知られるようになり、精神障害の分類と診断の手引き第4版(DSM-Ⅳ)には文化結合症候群の一つとして”Taijin-Kyofusho(TKS)”が載せられています。

そして欧米ではTaijin-Kyohushoとそのままの名称や、社会不安障害の他者影響型とよばれ、通常の社会不安障害とは区別して考えられています。

ところが、これまで対人恐怖症と社会不安障害の関係については、総説のなかで触れられることはあるものの、実証的な研究となるとほとんどありません。

ここではまず、これまでに対人恐怖症研究を精力的におこなった先駆者たちの研究を手短に紹介させていただき、社会不安障害との関連に進みたいと思います。

ところで、日本の研究者の考える対人恐怖症と欧米のTKSの理解は異なることを留意しておいていただきたく思います。

※参考文献:社会不安障害治療のストラテジー 小山司著