社会不安障害は、米国では大うつ病性障害、アルコール依存症についで3番目に多い精神疾患で、その有病率は十数パーセントにのぼるといわれています。

重要なことは、この大変ありふれた疾患である社会不安障害のコモビディティ率がEpideemiologic Catchment Area(ECA)研究で69%、National Comorbidity Survey(NCS)で81%と非常に高い点にあります。

そして、社会不安障害とコモビディティが多い疾患としては、上述した大うつ病性障害とアルコール依存症があげられています。

したがって、コモビディティに関する知識は社会不安障害の治療ストラテジーになくてはならない要素です。

さて、この社会不安障害のコモビディティとして、大うつ病性障害、パニック障害、そしてPTSDをあげ、詳細に論じました。

ここではその締めくくりとして、その他の重要な疾患について取り上げることとします。

主に、アルコール依存症と摂食障害の両疾患について話を進めたいと思います。

ですがその前に、まず社会不安障害のコモビディティの一般的な知識から整理します。

社会不安障害のコモビディティについて

社会不安障害のコモビディティについては、これまでいくつかの報告がなされていますが、前述したKatzelnickらによりおこなわれた研究は、社会不安障害のコモビディティを正確に把握した最もすぐれたものと思われ、信頼性も高いです。

まず彼らは1998年7~10月までの期間に米国健康維持組織(human maintenance organization:HMO)の2つのクリニックを受診した7,165名に対して、郵送もしくは電話による調査(スクリーニング)をおこない、さらに高得点の者に対して構造化面接を施行しました。

その結果、社会不安障害の患者さんの43.6%、ほぼ半数に何らかの精神疾患(Axis Iのみ)が存在しており、その内訳は頻度の高い順から、うつ病(35.8%)、アルコール依存症(11.3%)、パニック障害(5.9%)、薬物乱用(3.4%)となっていました。

また、KesslerらはUS NCSのデータから社会不安障害と気分障害のコモビディティについて調査し、やはり大うつ病性障害や気分変調性障害、あるいは双極性障害への危険率が2.7~5.9倍高まると報告しています。

その他、全般性不安障害や特定の恐怖症なども多いとする報告も散見されています。

したがって、社会不安障害のコモビディティとしては、気分障害、不安障害、アルコールなどの物質依存および乱用が問題となっています。

ここでは、これらの疾患からアルコール依存症について詳説します。

また、二次性社会不安障害という概念から、摂食障害と社会不安障害の関係についてもこれまでの研究結果をもとに述べたいと思います。

Lecrubierは社会不安障害のコモビディティについて興味深い指摘をしています。

社会不安障害の発症年齢の違いによってうつ病やアルコール依存症のコモビディティの発生率が変わってくるというものです。

具体的には、15歳未満に発症した早期発症群でそれ以降に発症した群より上記両疾患の併発率が高く、逆に全般性不安障害では併発率が低くなるとしました。

したがって、社会不安障害のコモビディティについては、今後更なる詳細な分析が必要と思われます。

※参考文献:社会不安障害治療のストラテジー 小山司著