驚くべきアメリカの社会不安障害の調査結果
社会不安障害は非常に稀だという状況を変えたのが同じアメリカで行われたNCSと省略される全米共存症調査と呼ばれる調査結果でした。
当時アメリカはコカインをはじめとする様々なドラッグの蔓延がおおきな社会問題となっていました。
この調査は大統領の後押しにより様々なこころの病気と薬物の依存との関連を調べる一環として行われたものでした。
このときにはDSM-Ⅲ-Rと省略される改訂版の診断基準が登場していました。
この研究の中心となったのがハーバード大学のケスラー教授らのグループです。
その後ケスラー教授らは世界銀行の後押しも受けて、世界各国で同じ方法で心の病気の疫学的な研究を実施し、わがくにでも行われています。
この調査では強迫性障害をはじめとして、どの心の病気も従来の予想を大きく上回る専門家の常識を超えた高い数字が出されました。
なんとアメリカでは一般の地域の人の中に、この一年間に社会不安障害と考えられる人が13.3%、調査時点までに一回でも社会不安障害に罹っていたと思われる人、すなわち生涯有病率が16%にも上ると報告したのです。
社会不安障害はそれまでのごくまれな恐怖症のひとつのタイプから、不安障害の中で最も多い病気、それどころか最も多い心の病気として俄然脚光を浴びることになったのです。
生涯有病率16%といえば、なんと約6人に一人がアメリカでは一生の間に一回は社会不安障害に罹るという計算になります。
どうしてこれほどの大きな違いが出てしまったのでしょう。
いまわかっているのは初期に行われた調査では質問項目が不十分なため実際以上に低い数字が出てしまったと考えられています。
その後ドイツやフランスで行われた研究でも、アメリカほどの高い数字ではありませんが、この一年に社会不安障害に罹っていたと思われている人の率は3~4%、生涯の有病率は7~12%とかなり高い数字が報告されています。
※参考文献:社会不安障害 田島治著