社会不安障害の人の不安が高まったときは、こう対処
社会不安障害の人の体の力を抜くコツ
社会不安障害の人が現実の場面で急激に不安が高まったときには、呼吸法、リラクセーション、注意の向け方・そらし方などによって、不安が和らぐことがあります。
社会不安障害の人がエクスポージャを実施して不安な場面に慣れていく訓練を進めていくときにも、あらかじめいくつかの不安対処法を身につけておくと役に立ちます。
社会不安障害の人のリラクセーション
リラックスする方法、体の力や緊張を抜くコツを覚えます。
いきなり「体の力を抜いてリラックスしてください」といわれても、案外むずかしいものですので、まず体のどこかに力を入れて、それから力を抜いてみます。
たとえば、背中の左右の肩甲骨をくっつけるような気持ちで、息を吸い込みながら、グーッと肩をいからせるように力を入れて、それからゆっくりと、息を吐きながら、力を抜いてみます。
体の部位はこれに限らず、どこでもいいのです。
どちらか、あるいは両方の手のコブシを強く握って上半身に近づけるように巻き込みながら上腕に力を入れ、それから指先まで力を抜きながら腕をブラリと下に垂らす。
自分のやりやすい方法を見つけて、繰り返し練習してみてください。
コツとしては、まず、息を吸い込みながら力を入れ、息を吐きながら力を抜くこと。
力を抜く時には、自分の体がスーッとリラックスしていく感覚に気持ちを向けるようにしてみてください。
社会不安障害の人は腹式呼吸をしてみる
私たちは緊張すると、胸がふくらむ呼吸(胸式呼吸)をするようになります。
これは浅く、早い呼吸です。逆に、ゆっくりと腹式呼吸を繰り返すことによって、体が落ち着き、気持ちも和らいでくることがあります。
緊張してきたら、お腹を軽く押さえるように手のひらを当てて、お腹が動くように意識しながら、ゆっくり息を吐いて、ゆっくり息を吸うようにしてみましょう(腹式呼吸)。
呼吸法を意識するスポーツや合唱サークルなどの経験がある人にとっては、さほど難しくないだろうと思いますが、慣れていないとうまくいかないこともあります。
でも練習すれば、だんだんできるようになりますので、あきらめないでください。
初めのうちは静かなくつろげる場所で、あお向けに横になって練習してみるのもいいでしょう。
そのときに数を数えてみるのもいい方法です。
またとっさに腹式呼吸をするのが難しい時には、まず大きくため息をついておなかから息を吐き出してみると、比較的スムーズに腹式呼吸に入っていけます。
社会不安障害の人は人のネクタイの色をチェック
社会不安障害の人は不安や緊張が高まると、胸がドキドキする、顔が赤くなるなどといった体の変化や上手く話せるだろうかなどという目前の心配事ばかりに気持ちが集中してしまいがちです。
そういったときに、意識的に他のことに注意を向けてみると、不安や緊張が和らぐことがあります。
社会不安障害の人が会議で発言の順番を待っているうちに不安になってきたら、今日の出席者はどんな服を着ている人が多いかと観察して、たとえば赤色系と青色系のネクタイをしている人がそれぞれ何人いるか数えてみます。
大きな会議室だったら、非常口はどこにあるか、いくつあるのか、探してみます。
注意を向けたり、そらしたりする対象は何でもいいのです。こういったことでも、人によって好みや向き不向きがありますので、いくつか試してみて、自分に向きそうな方法を繰り返し練習し、身につけておくといいでしょう。
これはリラクセーションや呼吸法についても同様ですが、社会不安障害の人が何らかの不安対処法を実際に使うのは、現実の不安場面やエクスポージャの実施中に、急に不安が強くなったり、気分が落ち着かなくなったり、胸がドキドキしたり、そういったときです。普段の練習でいつでもつかえるようにしておけば、そのようなときにもスムーズに対処できる可能性が高くなります。
参考文献:不安症を治す 大野裕著