社会不安障害とアルコール依存症
人前での不安や緊張を和らげるのにアルコールや様々な薬物が一時的に効果を発揮します。
社会不安障害の場合、そうしたことも影響してアルコールや薬物の依存に陥りやすいことはすでに述べた通りです。
ECAと略されるアメリカの疫学的キャッチメントエリア研究では、社会不安障害にアルコール依存は約二割、薬物依存は一割以上も伴うことが示されています。
その後、特に薬物の乱用と心の病気との関連を見る為に実施されたNCSと省略される全米共存症調査でもほぼ同様の結果が出されています。
多くの場合はまず、社交不安の症状があってその後にアルコールや薬物の依存が生じています。
フランスプライマリーケアの調査でも社会不安障害の三割前後にアルコール依存を伴うことが報告されています。
英国の調査でもアルコール依存の合併率が著しく高いことが指摘されています。
また、アルコールやその他の薬物の場合、過度の不安や緊張を和らげるセルフメディケーションとしての意味合いがありますが、ある研究ではそうした効果が期待できない喫煙の比率も高いという報告がなされています。
ドイツの若者3千人以上を14歳から24歳まで追跡調査したある有名な研究からは、社会不安障害に悩む人では喫煙の比率が二倍近いことが示されています。
日本でも年間3万人以上という自殺者数が9年以上も続き、大きな社会問題となっているのはご存知のとおりです。
自殺の背景として様々な心の病気、特にうつ病や躁うつ病、統合失調症、アルコール依存症が重要な役割を果たしていることが明らかになっています。
もちろん社会不安障害の場合もうつ病を合併してくると自殺のリスクが高くなりますが、アメリカの調査では全般性社会不安障害の方ではうつ病を合併していなくても、自殺未遂の既往のある方が5人に1人見られたという指摘もあります。
※参考文献:社会不安障害 田島治著