治療で人生が変わる社会不安障害

すでに述べましたように主に全般性社会不安障害の方はそれと気付かずに悩んでいると、失業や欠勤のリスクが高くなります。
中には意気消沈して自己嫌悪となり、引きこもり状態になってしまう方もまれではありません。
イギリスの研究でも失業している人の比率が高く、収入も低い傾向にあることが示されています。
このように未治療の社会不安障害、特に全般性の社会不安障害は人生に著しい悪影響がありますが、実は治療によって長年悩んでいた症状ばかりでなく、人生そのものにも大きな変化が生じるのです。

社会不安障害のうつ病を合併して自宅にひきこもり状態になり自殺も考えていた人が、SSRIの一種であるパロキセチンの治療により数ヵ月で見違えるように改善しています。
あまり他人の視線を気にせずに外に出られるようになり、希望する職種に再就職し元気で働いています。
視線が気になって会社を自ら辞め、自宅に5年以上も引きこもっていた男性が数ヵ月間パロキセチンを服用後あまり視線も気にならなくなり、元気で再就職している社会不安障害の克服例もあります。
以前は職場で同僚の視線と自分の視線が気になって仕事が手につかないばかりではなく、電車に乗ると同じ社内の人が気になって目が開けられず電車に乗ること自体が苦痛でした。
暇つぶしに図書館に行っても、そこにいる人が気になってゆっくり本を読むこともできません。
一目散に目当ての本がある場所に行ってすぐに戻るというパターンでした。
こうした社会不安障害の悩みも薬の効果が現れてくると著しく改善し、まさに人生そのものが変わったと喜びます。

中高年まで20年、30年以上と人知れず社会不安障害に悩んでいた方は治療によって良くなると人生が変わったと感謝する方もまれではありません。
ある初老の全般性社会不安障害の方は、窓口業務に回されたために若い時に公務員を辞めて資格を取り独立しました。
年とともに社会的な立場や責任も重くなり社会不安障害の症状が悪化しました。
このように年とともに良くなるどころかますます悪化したとこぼす方は多いようです。
この方の場合人前では字が書けない、緊張してしゃべれない、周囲、特に向かい側の席に座る人が気になって電車では目が開けられないなどの社会不安障害の症状に悩んでいました。
冠婚葬祭においては一人で記帳や焼香ができず、必ず無理やり妻を同伴してさせていました。
妻が同伴できない場合はたとえ身内や親友のものといえども出席することができず情けない思いをしていました。
電車も目をつぶって狸寝入りするのに耐えられず、ここ20年以上は一人では電車に乗れない状況となっていましたが、新聞で社会不安障害の記事を見た家族の勧めにより受診し、半年ほどの治療で、人生が変わったというほど良くなりました。