社会不安障害の治療で使用するSSRIの留意点

ここで注意しなくてはいけないのは、現在社会不安障害の薬による治療の中心となっているSSRIという薬は、症状が比較的重い全般性社会不安障害の方でその効果と有用性が示されただけであって、特定の場面でだけ手が震えるとか過度に緊張するといった比較的日常生活や人生に与える影響の少ない特定性ないし限局性社会不安障害と呼ばれる方には、SSRIの有用性は確認されていないのです。

もちろん、実際にはこうした限局性社会不安障害の方の数多くが訪れており、SSRIによって改善する方もあります。
しかし、SSRIは強力に脳のセロトニンの働きを強める薬であり、安易に用いるべきではありません。
飲み始めの吐き気や食欲不振、眠気だけでなく数ヵ月服用すると中には効き過ぎて攻撃的になったり、調子が高くなったりする方もいるので、注意が必要です。
ですから、薬による治療を行うかどうかは、こうした服薬に伴う長期のマイナス面も考慮して慎重に判断しなくてはなりません。

社会不安障害の治療をする場合には、まず先ほど述べた全般性社会不安障害か限局性社会不安障害かを明らかにする必要があります。
次に、どちらのタイプであっても、社会不安障害という病気とその治療について勉強する必要があります。
単に性格の問題と思い込んでいた人前での過度の緊張や恐怖の症状の背景にある心理や、脳の働きのアンバランス、治療に用いるSSRIの副作用や効果のの出方、長期の服用の必要性、薬をやめるときの注意点、薬を止めた場合の再発の可能性などについて知っておく必要があります。

※参考文献:社会不安障害 田島治著