社会不安障害の人は「失敗したくない」から不安になる

社会不安障害の人は、相手が、自分が緊張していることや不安になっていることにすぐに気付いて、「相手からバカにされる」とか「相手から嫌われてしまう」などと最悪の場合を常に考えてしまいます。

また「自分は人前で失敗する」とネガティブな予想に捉われて、不安を募らせます。

そうした不安は裏を返せば、「良いところを見せたい」「好かれたい」「うまくやりたい」というポジティブな気持ちの表れです。

「どうだっていい」「他人の目など気にしない」「失敗してもいい」と思っていたら緊張したりしないわけです。

そうした「失敗したくない!」という気持ちが、結果的に不安につながってしまっているのです。

社会不安障害の人が怖れる場面や状況はさまざま

社会不安障害の人が恐れる場面や状況は、以下のようなものがあります。

代表的な場面は人前に出て、話をしたリ、何かパフォーマンスをしたりすることです。

人前で発言しなければならない場面では、自分の順番が回ってくる前から緊張してしまい、胸がドキドキして冷静になれません。

いざ順番が来ると、顔は真っ赤になり、手も震え、しどろもどろになり、考えをまとめられず、終わった後には自分が何を言ったかさえわかりません。

こうした過剰な不安感から、会議やプレゼンテーションに対して強い苦手意識を持ち、仕事にも支障が出てしまいます。

また、ちょっとした雑談が苦手というケースもあります。

業務連絡なら良いのですが、雑談のように、テーマが決まっていない会話のときに、なにを話してよいのかわからず困ってしまうのです。

自分は話下手でうまく合いの手がいれられずつまらない話しかできないと思っているので、人と話した後は、相手にあきれられるのではないか、つまらない、面白くない人間と思われるのではないかとクヨクヨ考えてしまい、非常に苦しんでいます。

そうして、だんだん人付き合いがつらくなり、職場で孤立したことを苦にして仕事をやめてしまう場合まであるのです。

引きこもりにつながるケースもあります。

人の視線が極端に苦手という人もいます。

人から見られていると思うと緊張してしまうので、人と視線が合わないように、常に目をそらすようにしています。

「書痙」という古い病名がありますが、結婚式や講演会などの受付で、他人が見ている前で自分の名前などの字を書こうとすると、ふるえて字がキレイに書けないという人もいます。

最近では、他人の前でパソコンのマウスやキーボードの操作がうまくできないという報告も増えています。

その他、来客にお茶を出そうとすると茶碗をもつ手が震えてしまう、会食しているとお箸がふるえてしまうという人もいます。

いずれの場合も、周囲に人がいなければ、うまくできるのが特徴です。

失敗しないようにしよう、上手にやろうと思うほどうまくいかないのです。

このようにして自信を失い、他人がいるところでは何もしたくないと思うこともあります。

人の視線が苦手と言う人の中には、自分が変だと思われていると考えている人もいます。
自分の服装や、仕草などがおかしいので、他人に笑われたり、気味悪がられていると感じるのです。

大勢人がいるところで、一人だけでいることも苦手です。

「友達がいないから一人でいる」と思われるような気がするのです。

なにもしていなくても、他人が自分のことを悪意をもって見ているような気がします。

人が大勢いるところを避け、買物や外出もしたくなくなります。

※参考文献:自分で治す「社交不安症」 清水栄司著