社会不安障害における優勢な感情は不安です。
不安は、知覚された脅威に対して「逃げるか戦うか」反応が活性化されることによって生じます。
この反応は、動物において身体的な危険に対する緊急反応として発達したのですが、人間においては、それはまたいくつかのタイプの喪失の脅威によっても引き起こされ得ます。
すなわち、社会的立場を失う恐怖が社会不安障害の不安を引き起こすかもしれません。
それはまた、苛酷で危険な環境での生存が部族に受け入れてもらえるか否かにかかっていた有史以前の時代にさかのぼる、他者に受容されねばならない、という深い必要性と関連しているかもしれません。
いずれにしても、社会不安障害の不安は、否定的な評価をされることに対する恐怖によって引き起こされるということは、今や明らかです。
その基盤にあるのは、他者の意見に対する過度の関心です。
WatsonとFriendによって開発された次の質問票に答えると、他者があなたをどう思うかについてあなたがどの程度関心を持っているか、一般人口と比較することができます。
「否定的評価への恐怖」尺度
それぞれの項目について、あなたに当てはまるか否か、当てはまるのなら「〇」、宛はならないのなら「×」で答えてください。
すべての項目に答えてください。
1.人に馬鹿だと思われるのではないかと心配することは、ほとんどない
2.人が何と思おうとどうということはないとわかっていても、自分の事を人がどう思うか気になる
3.誰かが私の事を評価していることがわかると、緊張して神経過敏になる
4.人が私について良くない印象を持ちつつあるとわかっても気にしない
5.人前で失敗するとひどくうろたえてしまう
6.自分にとって大切な人達が私をどう思うか不安になることはほとんどない
7.馬鹿げたように見えないかとか、馬鹿なまねをして物笑いにならないかとよく心配する
8.自分のことを、他の人が認めてくれなくてもほとんど動じない
9.他の人が私の欠点に気付くのではないかとしばしば心配する
10.他の人が自分のことを認めてくれなくても、あまり気にならない
11.誰かが私のことを評価していると、最悪の場合を予想しがちである
12.どんな印象を人に与えているか、ほとんど気にしない
13.他の人が私を認めてくれないのではないかと思う
14.人に自分の欠点を見つけられるのではないかと心配だ
15.他の人が私をどう思うかが、私を左右することはない
16.人に気に入られなくても、必ずしもうろたえたりはしない
17.誰かと話しているとき、その人が自分のことをどう思っているのか心配だ
18.誰だって時には失敗をすることがあるのだから、私は失敗を気にする必要はないと思う
19.自分がどんな印象を与えているのかいつも気になる
20.自分の目上の人が私のことをどう思っているかひどく気になる
21.もし誰かが私のことを評価しているとわかっても、私にはほとんど関係ない
22・他の人が私のことを価値が無いと思うのではないかと心配だ
23.他の人が私の事をどう思うかはほとんどきにならない
24.他の人が私のことをどう思っているか、気にしすぎると思うことがときどきある
25.間違ったことを言ったり、したりするのではないかとしばしば心配になる
26.他の人が私をどう思っているか気にかけない方である
27.たいていの場合、他の人が私に対して良い印象を持つだろうという自信がある
28.私にとって大切な人が、私のことを気にかけてくれないのではないかと思うことが多い
29.私の友達が自分をどう思っているかをあれこれ考えてしまう
30.目上の人が私を評価しているとわかると緊張して神経過敏になる
2,3,5,7,9,11,13,14,17,19,20,22,24,25,28,29,30番の質問に対して「〇」と答えた場合は、1点ずつつけてください。
また、1,4,6,8,10,12,15,16,18,21,23,26,27番の質問に対して「×」と答えた場合は、1点ずつつけてください。
その得点により、あなたが生活上どの程度他人の承認を得ることに腐心しているかが分かります。
一般人口の約75%の人々はこの尺度で19点以下です。
これよりも高い得点は、他人の意見についての過剰な関心のレベルを示し、苦痛のもととなり社会的状況で不安を引き起こし得ます。
このことは、19点以下の人がいかなる社会不安も感じないという意味ではありません。
彼らも感じるのです。
すべての人は自分が出会った他の人に受け入れられており認められていると思いたいのです。
我々は皆愚かな失敗をしたり、不適切なことを言ったり、ふとしたことで自分が注意を引いたために感じる困惑えお知っています。
しかしながら、正常な社会不安と社会不安障害とではいくつかの違いがあります。
正常な社会不安
・認められたいと適度に望む
・認められるだろうと思う
・認められないことに対してある程度我慢できる
・小さい失敗は簡単に忘れる
・どちらか分からない時反応を肯定的に解釈する
社会不安障害
・認められることを強く望む、または認められなくてはならないと思い込む
・認められないだろうと思う
・認められないと極度に苦痛に感じる
・小さな失敗についてくよくよ考え取り乱す
・どちらか分からないとき反応を否定的に解釈する
問題の核心は、否定的評価への恐怖ですが、それは次のような非現実的な考えによって膨れ上がっています。
●否定的評価をどれほどの大事と考え、その結果が自分にとってどのようになると思うか
●自分が否定的に評価される可能性がどれくらいあると思うか
このことにより、あなたにとっては大きな苦悩の種である、明らかな不安の兆候を示す人、例えば、顔を赤らめたり身震いしたり、汗をかいたりぶるぶる震えたり、言葉を失ったように見えたり、どもりながら話したりする人の中に、そのことで悩んでいないように見える人がなぜいるか説明がつきます。
実際、過去治療されてきた人々の多くは、自分が怖くてたまらないことを、そのことに悩まされることなくできる人に会ったことがあると言っています。
例えば、文字を書いているとき震えているけれど平気な様子で、書痙になってない人。
さらに、プログラムに参加した大抵の人は、これらの「恥ずかしい」振る舞いをするかといって、そのような人が変わり者だとは思わないと言います。
また、彼らはそのとき周りにいた人が自分に対して批判的であったとも感じません。
社会不安障害のある人は、自分に対しては非常に厳しく厳密なルールや基準がありますが、他の人には適用して考えないことがしばしばあるようです。
それでいて、他人はこれらのルールを自分に対して適用するだろうと思っているのです。
時々ではありますが、社会不安障害の人には、そうした非現実的な判断基準を自分自身だけでなく他の全ての人に対して当てはめてしまうこともあります。
あなたは、誰かが不安そうにしていたり何かミスをしたりすると、かわいそうに思ったり、逆に過度に批判的な視線を向けたりしていることはないでしょうか。
世の中の大多数の人は、そんなときでもあまり気にすることはありません。
あなただったらあれこれ気持ちを巡らせるかもしれませんが、他の人はそうではありません。
あなたが批判的に思っていることを知っているような場合ですら、それについてくよくよ考えるようなこともまずないでしょう(もっとも、他人の気持ちを読める人など誰もいないので心配はいりませんが)。
社会的な状況において、普通で何も別におかしくないと受け取られる振る舞いの許容範囲は、まず間違いなく、あなたが信じているよりはずっと広いことが多いのです。
社会不安障害の人によくある、自分についての思い込み
「ちゃんとしてると思われないと!」
「場を盛り上げないとダメな奴だと思われてしまう」
「もし不安だとわかったら、きっと臆病だと思われる」
「もし話のネタがないと、この場を台無しにしてしまう」
「きっとみんなに嫌われることになるだろう」
社会不安障害の人によくある、他人が考えていることについての思い込み
「バカな奴」
「あれじゃダメだよ、どっか抜けてるんじゃないの」
「あの人どうしたんだろう」
「あの娘ちょっとおかしいよ」
「めちゃくちゃだな、あいつは」
プログラムを通じて、あなたが自分自身や他人についてどのように考えるかについて吟味します。
あなたはおそらく、非現実的で、それゆえ自分自身にとって負担になる考えを持っているでしょう。
我々は、それが特に、他人からの否定的評価にまつわるものである、ということを知っています。
このプログラムの目的は、このようなものの見方を作り直すことです。
つまり、日常生活において、現実的に考えることができるようになるための方法です。
我々はこれを「認知再構成」と呼んでいます。
現実的に考えることができるようになるための方法です。
しかし、忘れてはならないのは、治療の目的は不安を人生からすっかり取り除くことではないということです。
なぜなら、不安反応がまったく合理的で有用なときがあるからです。
むしろ、我々の目的は、不必要で、過度の不安をできるだけ減らすことにあります。
また、我々の目的はあなたが正常な社会不安を持っていても安気でいられるようになっていただくことです。