この章では、無意識に現われる<身体反応>とは違って、ある程度自覚的になされる<行動>について取り上げていく。

読者の皆さんは、<社会不安障害><社会不安>を感じた時、普段とは違う<不自然な行動>をとってしまったことはないだろうか?

自然にふるまおうとすればするほど、へまをしてしまうというような・・・。

まず、こうした悩みを抱える二人の話を聞いて欲しい

ジャン=リュック(五十歳、実業家)の場合

「カクテルパーティに招待される機会がよくあるんですが、いつもどんな話をしたらいいか、どんな態度をとるべきか、困ってしまうんです。

会話に参加しても、自分からはひと言もしゃべらずに、ひきつった愛想笑いを浮かべたり、相づちばかりしてしまいます。

だって、私なんかが話をしても、みんな退屈しちゃうんじゃないかと思ってね。

そんな時、意見を求められたリしたら、もうパニックになって大変です。

訳の分からないことを口走ったり、ちっともおかしくない冗談を言ってみたり・・・。

そのせいで会話の輪からはずれると、今度は身の置き場に困ってしまいます。

なんだか周りの人達から、「あの人って、パーティに溶けこめないような退屈なおとこなのね」と陰口を言われているような気がしてくるんです。

だから、ごまかすのに一苦労ですよ。

たとえば、部屋に飾ってある絵画に真剣に見入ってるふりをしたり、会話を楽しめないほど大きな心配事を抱えているように見せかけたり、忙しい合間をぬって仕方なくここにやって来たのだというそぶりをしたり・・・。

クレマンス(ニ十二歳、女子学生)の場合

私、みんなが思っているような人間じゃないんです。

たとえば、よく「クールな人だね」と言われますが、それは人一倍臆病なために、素直に感情を外に表わせないだけなんです。

あと、食事や遊びに誘われてもなかなか首を縦に振らないのは、べつに孤独が好きなわけじゃなくて、「私なんかと一緒にいてもみんな楽しくないんじゃないかしら」と不安になるからなんです。

みんなの輪からいつも少し離れたところにいるのも、他人に関心がないからじゃなくて、自分が好かれていないのではないかと心配だからなんですよ。

本当はみんなと仲良くしたいのに、不安や怖れのせいでどうしても素直になれない。

どうしたらこの気持ち、みんなにわかってもらえるんでしょうね?

ジャン=リュックとクレマンスの話を聞いて、身に覚えがあるという人もいるのではないだろうか?

実は私たちは誰でも<社会不安>を感じることによって、いつも通りの自然な行動がとれなくなってしまうことがある。

こうした<社会不安障害><社会不安>による<不自然な行動>のタイプは、次の三つに大別される。

1.他人とのコミュニケーションがぎこちなくなる
2.不安を感じる状況を回避する、逃避する
3.極度に消極的になる、攻撃的になる

※参考文献:他人がこわい あがり症・内気・社会恐怖の心理学
      クリストフ・アンドレ&パトリック・レジュロン著 高野優監訳