<回避性人格障害>は、おそらく読者のみなさんが想像している以上に世の中に広まっている。

<回避性人格障害>に見られる<回避行動>は、およそ50%の割合で<社会不安障害>と関わり合っている。

専門家たちのなかには、<回避性人格障害>という疾患など存在せず、それは<社会不安障害>の症状の一つに過ぎない、と主張する人もいるほどだ。

つまり、<社会不安障害>の人が強い不安から逃れようとする時に<回避性人格障害>の症状が現われる、というのである。

この説が正しいかどうかは今後の研究に委ねるとして、いずれにしても、強い不安が<回避行動>を引き起こす可能性が高いことは確かである。

<回避行動>がもたらす結果は甚大だ。

なんといっても、他人に対する怖れや緊張感が、他人への不信や拒絶へといつの間にか変わってしまうのだから・・・。

表3-1で<回避性人格障害>と<社会不安障害>を比較しているので参考にしてほしい。

回避性人格障害 社会不安障害
自らの回避行動を正当化する、「自分が望まないからそうしないだけだ」、「そんなのはたいしたことじゃない」、「私はとても疲れてるんだ」など 自らの回避行動に罪悪感を感じる、「避けるべきではないのに避けてしまったが、自分にはできると思えない」、「私はそれほど強くない」、「恥ずかしい」など
他人に責任があると思う、「それはあの人のせいだ」、「だってあの人達が心が狭くて、不親切で、不寛容なのが悪いんだ」など 自分に責任があると思う、「それは私のせいだ」、「私の努力が足りなかった」、「私が感情的になり過ぎた」、「私が自分に甘すぎた」など
自分の社会不安について誰かに助けを求めることはほとんどない もし自分の状況に気付いていれば、自分の社会不安について誰かに助けを求める
自分の社会不安についてほとんど自覚がない 自分の社会不安から生じる苦しみを自覚している
自我同調性「私はこういう人間なのだ」 自我異和性「私はこういう自分が嫌だ
友人が少なく、用事がなくて出かけることはほとんどない 何人か友人がおり、用事がなくても出かけることはある

表3-1回避性人格障害?それとも社会不安障害?