私達が<社会不安障害><社会不安>を感じるようになってしまう原因は、いったいどこにあるのだろう?

これまでさまざまな研究者たちがこの問題に取り組んできたが、実はいまだにはっきりとは解明されていない。

だがこれまでのところ、ほとんどの精神疾患がそうであるように、<社会不安障害><社会不安>についても、先天的要因と後天的要因が複雑にからみあっていることが明らかになっている。

絡み合う三つの要因

私達が<社会不安>を感じるようになる要因は、大きく三つに分けることができる。

それは、「生物学的要因」(遺伝)、「心理学的要因」(家庭環境、過去の経験など)、「社会学的要因」(時代、文化など)、の三つである。

それぞれの影響の大きさはひとによってさまざまだ。

例えば、ある人の場合は遺伝が大きく関わっているが、別の人の場合は家庭環境による影響が大きいというように・・・。

しかし、これはあくまでも度合いの問題にすぎず、多かれ少なかれすべての要因が混ざり合っているのがほとんどのケースである。

では、これら三つについて初めに簡単に説明しておこう。

まずは、「生物学的要因」、つまり<遺伝>について。

私達は誰でもみんな<遺伝>の大きな影響を受けている。

それも、かなり幼い頃からその傾向が現れることが多い。

こうした<遺伝>の影響は、一般的には生まれつきの<気質>や<性格>と呼ばれているが、まさに私達個人の土台を築いていると言えよう。

そして実際、<社会不安障害><社会不安>になりやすい気質というものが存在しているのである。

さらに、この<遺伝>の土台の上に積み重ねられていく地層となるのが、「心理学的要因」、つまり家庭環境や個人の経験である。

とくに、幼い頃に親にどのように育てられたか(教育方針、愛情の与え方、親が子の前で行う言動など)ということは、本人が将来<社会不安障害><社会不安>を感じるようになるかどうかにおおいに関わってくる。

それに加えて、「社会学的要因」、つまり時代や文化の影響も少なくない。

たとえば、本人が生きている時代や生まれ育った土地の文化などによって、ある種の個人的な傾向が周りから受け入れられたリそうではなかったりすることがあるだろう。

実際、女性の<社会不安障害><社会不安>は男性よりも周りから受け入れてもらえる傾向が強いのは確かである。

※参考文献:他人がこわい あがり症・内気・社会恐怖の心理学
      クリストフ・アンドレ&パトリック・レジュロン著 高野優監訳