生まれてから今までに一度も不安を感じたことがない、という人はいないと思いますが、不安は人間に自然に備わった感情です。
決して愉快な感情ではないので、「不安を感じなければよいのに」と思うこともありますが、どんな感情にも存在意義があります。
不安という感情の場合、それは、「安全かどうかわからない」ということを自分に知らせてくれて、安全確保のための機会を与えてくれるというものです。
たとえば、目隠しをして知らないところを歩いている、という状況を想像してください。
そんなときには、とても強い不安を感じるでしょう。
すぐ先が崖になっているかもしれないし、どんなに危険なことが待っているかわからないからです。
不安を感じるから、足がすくみます。
前進するとしても、おそるおそる、安全を確認しながら進むことになるでしょう。
この状況で不安を感じないとしたら、どうでしょうか。
何の不安も感じずにどんどん歩いてしまったら、本当に危険な目に遭うかもしれません。
こうして考えてみると、不安は一種の自己防御能力であるということがわかります。
不安だけでなく、全ての感情が実は合理的に人間に備わったものなのだと思いますが、不安の場合は「安全の確保」が一番の存在意義であると言えます。
不安を感じることそのものは、異常であるどころか、人間に与えられた力であると考えることができるのです。
※参考文献:対人関係療法でなおす社交不安障害 水島広子著