社会不安障害は男性にも女性にも見られる病気です。

地域の疫学調査では女性の方が多いという結果が得られていますが、治療を受けに来る人だけを見れば男性の方が多いようです。

社会不安障害は男女どちらにとっても苦しいものですが、「不安を感じるなんて女々しいこと」という価値観を持つ男性の場合には、症状の意味づけがさらに重いものになるのかもしれません。

社会不安障害は、不安障害のなかでもっとも多く見られるものです。

どこまでを「障害」と呼ぶかによって一般人口における病気の割合は変わりますが、今まで米国で行われてきた調査からは、一生のうちのどこかの時点で社会不安障害になる人は一般人口の13%にのぼるとも言われています。

13%というのは、NCSという全国規模の併存症調査においてえられた数値ですが、「障害」の定義を広くとったものだと思われます。
この調査結果を、臨床的に見ても病気だと思われるものに絞り込む研究がその後行われ、一年間で見たときの有病率は18~54歳の成人のうち3.7%と推定されています。

絞り込む前(7.4%)の約半分になっていますが、いずれにしてもかなり多くの人にとってかかわりのある病気であることがわかります。

また、社会不安障害を持つ人の家族には、そうでない家族よりも社会不安障害が生じやすいということが知られています。

この傾向は特に全般性の社会不安障害において強く見られます。

しかし、これをもって「社会不安障害」は遺伝する」と言い切ることはできません。

社会不安障害を持つ親は、不安の強い育児をする傾向にあるため、子どもが社会不安障害になったからと言って、それが遺伝によるものなのか生育環境によるものなのかはわからないのです。

また、社会不安障害の人の親は社会不安障害以外の不安障害を持っていることも多く、「社会不安障害」という病気そのものが遺伝するというよりも、不安障害になりやすい気質が遺伝するのかもしれません。

気質と言えば、社会不安障害は「回避性パーソナリティ障害」と質的に違いがなく、回避性パーソナリティ障害は、全般性の社会不安障害のより重度な形であるという見方もあります。

これらの背景からは、社会不安障害はある程度の「素質」のもとに現れるものではあるけれども、他の病気と同じく、全てが「素質」で決まるものではなく、環境との相互作用のなかで発症するものだと考えられます。

社会不安障害を持つ人の場合、その子供も社会不安障害になりやすい可能性はありますが、そうだからこそ、本サイトに述べるようなことに注意して育てていく、という考え方もできます。

社会不安障害は典型的には十代なかばで発症します。

より若い発症例もありますし、もっと後に発症する人もいます。

人前で恥をかくような体験や、人から厳しく批判される体験など、明確なきっかけをもって突然発症することもありますが、徐々に始まったためにいつからと特定できないようなことも多いです。

社会不安障害になるまでは比較的明るく社交的だったというタイプの場合は発症の時期が明確になることが多く、小さいころから内気だったというタイプの場合にはいつ発症したかを特定するのが難しいようです。

※参考文献:対人関係療法でなおす社交不安障害 水島広子著