社会不安障害の方のなかには、不安を感じずに済む人との関係のなかで、抑えている感情が爆発し、攻撃的になったりするケースがときどきあります。

社会不安障害という病気をかかえていることは苦しいことですし、特にそれを自分の人格の問題だと捉えていると絶望的になってしまいますから、爆発したくなる気持ちもわかります。

また、過保護な家族などに対しては、息苦しさを感じると、ぶっきらぼうな言葉で排除しようとしたりすることもあります。

社会不安障害の方の攻撃的な言動に対しては、ふたつの姿勢のバランスをとることが必要です。

ひとつは、ご本人の不適切な言動を「病気の結果」として共感的に見ることです。

これだけ日頃から自分を抑え自分を責めて暮らしていたら、自分の中に不健康なエネルギーがたまっていきますから、攻撃的になるのも仕方がない、ということです。

第二の姿勢として、「抑えるか、爆発するか」ではない人とのやりとりを示していくことも必要です。

攻撃的な言動では、結局のところ、肝心なことは伝わらないからです。

ただ、ある医師の臨床経験からは、「爆発しても伝わらない」というアプローチは社会不安障害には適していません。

病気の本質は「爆発」にあるわけではなく、患者さん自身が誰よりも感情的になる自分を恥じているからです。

「爆発」というところを強調してしまうと、自分を恥ずかしく思う気持ちが刺激され、そんな自分を隠さなければ、とますます社会不安障害が悪化します。

「抑えていたら伝わらない」という、治療の本筋を進めていくことで、抑えることとセットで出てくる爆発のほうは収まってくるものです。

ご家族からすると、やはり「爆発」のほうが目につきますのでそちらから介入したくなるものですが、それは逆効果になることが多いということを覚えておいていただきたいと思います。

※参考文献:対人関係療法でなおす社交不安障害 水島広子著