Q.社会不安障害の薬物療法は、一度受け始めたら、ずっと薬を飲み続けなければいけませんか。
A.現在、社会不安障害に用いられている主要な薬は、
1.継続的に飲むことで症状のベースになっている「潜在不安」を軽減する「SSRI」(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)
2.とくに不安・緊張が強くなる場面での症状の予防・緩和を目的に、頓服(必要に応じて服用すること)的に用いる「抗不安剤」の二つです。
2は、もともと効かせたい場面に照準を絞って使う頓服薬ですから、長期連用について気にかかるとすれば1のSSRIについてでしょう。
SSRIは、飲み始めてすぐは効かず、通常、服用開始から1~2週間後から徐々に効いてきます。
ですから、効果を得るには、少なくとも一定期間(最低でも3~6カ月)は服用する必要があります。
その先も服用を続けるかどうかは、症状やご本人にとっての薬剤の必要性、薬剤療法の位置付けによって変わってきます。
たとえば、最初は心理療法を受ける気になれなかった人でも、薬剤療法によって不安感や緊張が緩和されると、いわば「意欲の底上げ」がなされて、心理療法に前向きな姿勢を見せ始める場合があります。
社会不安障害の主要な心理療法は、自己コントロールによって不安感や緊張を予防・緩和し、日常生活の支障をなくすことを目的としています。
それがうまく習得できれば、薬剤を徐々に減らしたり、やめたりすることもできます。
社会不安障害に限らず、たとえば高血圧の薬などでも、「飲み始めると、ずっと飲まないといけないから飲みたくない」とおっしゃる患者さんは少なくありません。
しかし、その薬剤が現状から見て、あるいは将来の症状予防のために必要なら、「飲み続けるのがいやだからのみたくない」は本末転倒ではないでしょうか。
高血圧の例でいえば、いま血圧を下げておかないと、将来の脳血管障害や心臓病が懸念される状態であり、薬の助けが必要、あるいは有効と思われるときに薬(降圧剤)が処方されます。
ですから、長期服用について心配する前に、まずは薬で血圧を下げて血管障害などを防いだうえで、食事や生活改善で薬の減量・停止を目指すのが本道だと思います。
社会不安障害の場合も同じことがいえます。
長期服用をさけたいと思うなら、薬の助けを活用しながらも薬に頼り過ぎないで、自己コントロールを目指すとよいでしょう。
※参考文献:人の目が怖い「社会不安障害」を治す本 三木治 細谷紀江共著