ステップ1:暴露階層表を作成するために、自分にとって問題となる状況を明確にして目標を定めてください。

第2節
では、あなたが不安に感じるような状況をいくつか挙げていただきました。

この表に、あなたが到達したい社会的やりとりや社会的活動の目標を書き加えて下さい。

この段階では、以下の例のように非常に限定した目標を書き加えてください。

この段階では、以下の例のように非常に限定した目標を明確にすることが有益でしょう。


「地元のレストランで親友2人と食事をとれるようにする」
「クレジットカード伝票にサインできるようにする」
「職場で10人を前にして短い発表をする」


比較的簡単なものから非常に難しいものまで、目標には幅を持たせるとよいでしょう。

目標がはっきりしていればしているほど、その目標を達成するためのプログラム作りは容易になります。

例えば「パーティーを楽しむ」に対して「今週の土曜日にジェーンのパーティーに参加し、少なくとも20分はそこにいて、2人の人とそれぞれ5分ずつ会話できるようにする」目標を明確にすることはまた、あなたの感じる不安のレベルをより正確に測定し、その課題についての非現実的で無益な思考を明確にして認知再構成を行うことにも役立ちます。

長期目標と短期目標の両方を立てましょう。

長期目標のいくつかは、次の例のように幾分広義に記載するのがよいでしょう。

例えば「社会的場面でもより安心できること」このように目標を立てることで、こうした目標を達成するには実際にどうしていくのかを考えたり、目標に向けた段階を工夫することが促されます。

例えば、もしあなたが「社会的場面でより安心できること」という目標を選んだとすると、「安心できる」をそのように定義するのか決めなければならないでしょうし、どういう社会状況で安心でいたいのかも決めなければならないでしょう。

さらにこうした社会状況のひとつひとつ、あるいは類似の場面に対して暴露練習を始めなくてはならなくなるでしょう。

例えば「ポールのディナーパーティーへ行って不安を感じないようにすること」という目標は、極めて達成困難でしょう。

この場面において幾分不安を感じるのはまったく理にかなっているからです。

こうしたアプローチのさらなる問題点は、不安に焦点をあわせすぎてしまうことです。

不安にならないようにしようと一生懸命試みれば試みるほど、実際にはより不安になるものなのです。

「ピンクのゾウ」(訳注:ありえないものの喩え)について考えるなといわれたらどうしますか?

「ポールのディナーパーティーへ行くこと」あるいは「ポールのディナーパーティーへ行って自分の不安をコントロールすること」という目標ははるかに適切です。

社会的目標を設定する際に気を付けるべきこと

●現実的な目標を立てること

●難しい、広範な、あるいは長期的な目標は、個別かつ具体的な目標に分けること

●不安をすっかり取り去ることを目標としないこと

ステップ2:SUD評価

第4節で述べたSUD尺度を使って、各目標がもたらす不安の程度を評価します。この場合、SUD評価で100は今まで経験したうちで最高の不安を表し、0は不安がないことを表します。

また、SUD評価を進歩のモニターとしても使います。

ステップ3:目標をいくつかの段階に分けてください

SUD評価が30~40以上の目標は、段階を細かく分けて一回に少しずつ目標に進めるようにする必要があります。

「近くのレストランで食事ができること」
という目標を例にとってみましょう。

これは人前で食事をするのが怖い人の場合です。

この恐怖を取り除けるようにするため、1.少量の料理、2.混んでいないレストラン、でスタートするのがよいでしょう。

それから徐々に料理の量と人の数を増やしていくのがよいでしょう。


目標:近くのレストランで食事ができるようになること
この目標は次のような段階に細分することができるでしょう  SUD

・朝早くレストランでオレンジジュースを飲む  30
・昼食時にオレンジジュースを飲む  45
・朝早く一杯のコーヒーを飲みサンドイッチを食べる  50
・昼食時に一杯のコーヒーを飲みサンドイッチを食べる  65
・夕食にスープを注文する。少なくとも20分はいて、飲み終わっていなくても出る 75
・夕食にフルコースを注文して食べ終わるまでいる
 課題を知っている友人といっしょに  90
 課題を知らない友人と一緒に  100


暴露の目標を達成するために計画を立てる際の要点は、目標ににているけれどより易しくできる方法を考え出すことです。

上の例を見て各階段でどう変わったかに注意しましょう。

課題の難易度を調整するためには、以下のような点を変化させるとよいでしょう(他にも考えられるでしょう)。


誰:目標に向かって取り組んでいる時誰が一緒にいるか

何:目標としてどんな行動を設定するか。はっきりと具体的に決めること

時間:課題をいつ実行するか

場所:課題をどこで実行するか

長さ:どれくらいの時間課題を行い、その場にいるか


必要な段階の数は課題の難しさの程度によります。上の例の段階のいくつかは易しすぎるという人もいるかもしれません。

その場合は易し過ぎるものは省いてよいでしょう。

評価は現実的にやりましょう。

段階ごとの不安は、過小評価するより過大評価したほうがよいでしょう。

また、成功する可能性が大きいと思える課題から取り組んだ方がよいでしょう。

「75%ルール」を使う人もいます。

つまり、達成できる可能性が約75%であるような目標のみを採用することです。

このルールを使うと、ある段階から次の段階へ飛躍がないかどうか、つまり、まだ準備ができていないレベルを試そうとしてはいないかどうかを知ることができます。

成功の確率が75%以下と思うなら、成功率を上げるため、段階をもっと容易なものにしてください。

しかし、75%ルールを、課題を避ける理由として使ってはいけません。

いつでも何らかの方法でその課題を修正できるのですから(状況によっては、想像上の脱感作が有用なことがあります。下記参照)。

SUD、つまり自信の評価はまた、いつ次の段階へ進む準備ができるかを決めるときにも使えます。

基本的には自分が次の段階へ到達できる自信が約75%になるまでか、現在の段階での不安の評価が30%以下になるまでその段階に留まります。

不安がひどくなっても、取り乱したり逃げ出したりしてはいけません。

状況が許すなら一時的に活動を止めましょう。

座るか休める場所を見つけて呼吸コントロールをし、非現実的な考えを抑えましょう。

そして恐怖が減ってくるのを待ちましょう。

数分以内で減り始めるでしょう。

もし中断できない状況なら、うまくやろうとしないで、その場に居続けるのも一つの方法です。

例えば、会話で沈黙が生じてもそれでいいではないですか。

沈黙を埋めるのはあなたの義務ではないのですから。

恐怖のためにその場を離れる、というようなことが決してないようにするのが目標です。

必要だと思えば、間をおいて呼吸コントロールをし、自分に対してではななく目の前の課題に集中しましょう。

少なくとも不安が減り始めるまでは動いてはいけません。

一番いいのは、不安が収まってもその場にしばらく居ることです。

不安が減少する前に離れてしまっては失敗したと思うことになり、自信を失い恐怖は増します。

予想されたSUDと実際に経験したSUDの両方を記した暴露課題日記をつけて進歩を記録しましょう。

プログラムの途中で、次の段階が易し過ぎる、
または難し過ぎると分かったら、どんどん調整していってください。

日記には目標、段階、到達点、さらにどう感じたか、特定の状況にどう対処したか(対処法)についての説明を書きましょう。

こうすると、進歩の具合がはっきり分かりますし、自分がどの程度進歩しているかについて知ることができます。

成功からも困難からも学ぶことがあります。

日記はずっとつけて下さい。

一度に少なくとも3つの目標をこなすようにしましょう。同時に短期と長期の目標に取り組むのはよいことです。

長期目標には多くの段階が必要なことを忘れないように。

毎日必ず何かをするようにしましょう。

※参考文献:不安障害の認知行動療法(2)社会恐怖 患者さん向けマニュアル