社会不安障害は他の病気を伴うことも多いものです。

パニック障害など他の不安障害、うつ病、アルコールや薬物の乱用、摂食障害などを社会不安障害とともに持っている人もいますが、多くの場合、最初に発症しているのは社会不安障害の方です。

アルコール・薬物の乱用や摂食障害などは、自分の不安を何とかしようとして始めた「自己治療」であることが多いのです。

アルコールや薬物で不安をどうにかしようと思ったり、やせることで自信をつけようとしたりするわけです。

もちろんこれらのことに治療効果はなく、むしろ逆効果で、結果としてはどちらもが治療の必要な病気として発展していくことになりがちです。

実際に、うつ病やアルコール・薬物乱用、摂食障害の治療のために受診した人が、以前から続いている社会不安障害を持っていることがわかる、というケースも多いです。

社会不安障害だけでは治療を求める人が少ないということとも関連していると思います。

一見わかりにくい例としては、社会不安障害とパニック障害を両方とも持っているケースがあります。

パニック障害とは、動悸、発汗、震え、息苦しさ、窒息感、胸部不快感、めまいなどをともなうパニック発作(強い不安発作)が予期しないときに繰り返し起こり、また発作が起こったらどうしようという恐怖のために行動パターンが変わってしまう状態のことを言います。

社会不安障害で起こるパニック発作もあるため、それが社会不安障害によるものなのか、パニック障害によるものなのかがわかりにくいこともあります。

考え方の整理としては、人とやりとりする状況(人前で話すなど)に際してのみパニック発作が起こるのであれば社会不安障害によるものであると言えます。

つまり、パニック発作が起こるだろうと予期できる状況でのみ起こるということです。

それ以外の時にも、予期しないときにパニック発作が起こるようであれば、それはパニック障害によるものであると言えるでしょう。

社会不安障害の人はひとりでいるときにパニック発作を起こすことはほとんどありませんので、それも見分けるポイントになるでしょう。

ただし、ひとりでいるときでも、「来週の会議でうまく話せるだろうか」などと未来のことを考えて不安を強く感じれば、パニック発作が起こります。

その場合、「人とやりとりする状況について考えていた」ということがヒントになるでしょう。

うつ病は社会不安障害の人の約三分の一に起こると言われており、うつ病も併発すると生活はより難しくなると考えられます。

対人関係療法はうつ病にも効果的な治療法ですので、どちらにも効果を示すことが期待できます。

対人関係療法だけでなく、抗うつ薬と認知行動療法のいずれも、社会不安障害にもうつ病にも効果があります。

※参考文献:対人関係療法でなおす社交不安障害 水島広子著